在留期間の更新は「書類を出せば通る手続」ではありません。入管法上、更新の許可は法務大臣の裁量であり、「適当と認めるに足りる相当の理由」があるときに限り認められます。判断の物差しになるのが入管庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」(平成20年策定・最終改正 令和8年6月)が挙げる8つの考慮事項です。本記事はこの8項目と公表されている不許可事例から、更新で落ちる典型的な理由10個と、その予防策を整理します。

この記事の結論

  • 審査は8項目:①在留資格該当性(必要条件)②上陸許可基準(原則適合)③在留資格に応じた活動の実績 ④素行 ⑤独立の生計 ⑥雇用・労働条件 ⑦納税義務等の履行 ⑧入管法上の届出義務の履行。
  • ③以下は考慮要素で、すべて満たしていても総合判断で不許可があり得る——逆に1つの弱点が即アウトとも限らない。
  • 実務で多いのは**「仕事の中身が資格と合っていない」「週28時間超のアルバイト」「住民税・国保の未納」「転職・引越し時の届出忘れ」**の4系統。
  • 令和8年6月改正で、入管庁が関係機関から納税状況等の情報提供を受けて判断する運用が明文化——「バレなければ」は通用しない。
  • 更新は満了の概ね3か月前から申請可能(6か月以上の在留期間の場合)。期間内申請なら処分まで(最長で満了日から2か月)在留は継続する(入管法20条6項の特例期間)。標準処理期間は2週間〜1か月。

1. 審査の仕組み — ガイドライン8項目

【原文】在留資格の変更及び在留期間の更新は……法務大臣が適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可することとされており、この相当の理由があるか否かの判断は、専ら法務大臣の自由な裁量に委ねられ、申請者の行おうとする活動、在留の状況、在留の必要性等を総合的に勘案して行っている

#考慮事項位置づけ
1行おうとする活動が在留資格に該当すること必要条件
2上陸許可基準等に適合していること原則として適合が必要
3現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと考慮要素
4素行が不良でないこと考慮要素
5独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること考慮要素
6雇用・労働条件が適正であること考慮要素
7納税義務等を履行していること考慮要素
8入管法に定める届出等の義務を履行していること考慮要素

2. よくある不許可理由10選

① 仕事の中身が在留資格に該当しない(項目1)——技人国なのに実態はライン作業・接客・清掃が主業務、というパターン。「研修の一環」と説明しても、それが在留期間の大半を占めれば不許可です。技人国の実務研修ルール参照。

② 報酬が日本人と同等未満に下がった(項目2)——転職・契約変更で報酬が下がり、同種業務の日本人従業員を下回ると上陸許可基準に不適合。実際に月額13万5千円(日本人新卒18万円)で不許可の公表事例があります。

③ 在留資格に応じた活動をしていなかった(項目3)——除籍・退学後もそのまま在留していた留学生、失踪した技能実習生が典型。正当な理由のない長期間の出国(再入国許可によるものを含む)も消極評価されます。

④ 刑事処分・不法就労あっせん等の素行不良(項目4)——退去強制事由に準ずる刑事処分を受けた行為や不法就労あっせんは、初犯でも素行不良と判断されます。

⑤ 資格外活動の週28時間超過(項目4)——留学生・家族滞在の典型例。恒常的に週28時間を超えてアルバイトをしていた場合、素行が善良とはみなされません。過去の申請で問題化しなくても、次の申請で発覚した事例が公表されています。

⑥ 生計が立っていない(項目5)——収入・資産から安定した生活が見込めないと消極評価。世帯単位で認められれば足り、公共の負担になっていても人道上の理由があれば勘案されます。

⑦ 雇用・労働条件が労働法規違反(項目6)——アルバイトを含め、最低賃金割れ・社会保険未加入などは問題になります。ただし違反の責任が雇用主側にある場合、本人に責がない点は勘案されます。

⑧ 住民税・国保・年金の未納(項目7)——高額・長期間の未納は悪質と判断されれば不許可要素。国民健康保険料など法令上の納付義務も対象です。令和8年6月改正で、関係機関からの情報提供に基づく確認が注記されました——窓口で納税証明を出さなくても、未納は把握され得ます。

⑨ 届出義務の不履行(項目8)——転職(契約機関の変更)・離婚等から14日以内の所属機関・配偶者に関する届出、住居地変更の届出、在留カード関係の手続を怠っていた場合。それ自体は小さなミスでも、積み重なると「在留状況不良」の評価になります。

⑩ 所属機関の実態・継続性に問題(項目1・2)——勤務先がペーパーカンパニーだった、事業所の実態がない、経営・管理ビザで2期連続の債務超過——本人ではなく会社側の事情で落ちるパターンです。経営・管理ビザの事業継続性マトリクス参照。

3. 更新前セルフチェック

  • 今の業務内容が在留資格の活動範囲に収まっているか(転職・異動があった場合は特に)
  • 報酬が同種業務の日本人と同等以上か
  • 資格外活動許可の範囲(週28時間等)を超えていないか
  • 住民税・国民健康保険料・年金の納付状況(未納があれば申請前に納付・分納協議)
  • 転職・離婚・引越し等の届出(14日以内)を出していたか — 出し忘れは今からでも提出
  • 所属機関の変更があった場合、就労資格証明書の交付を受けたか
  • 健康保険の資格情報(マイナポータル画面・資格確認書等)を提示できるか
  • 長期の出国があった場合、その理由を説明できる資料

IT・オンラインでの解決策

未納・届出忘れは「気づいた時点で解消」が鉄則です。マイナポータルで健康保険の資格情報と年金記録を、自治体のオンライン納付サービスで住民税・国保の納付状況を申請前に確認できます。所属機関等に関する届出は入管庁電子届出システムからオンラインで提出でき、窓口に行く必要はありません。更新申請自体も在留申請オンラインシステムが使え、手数料は窓口6,000円に対し5,500円です。

まとめ

項目内容
審査基準ガイドライン8項目(法務大臣の裁量・総合判断)
申請時期在留期間満了の概ね3か月前から(6か月以上の在留期間の場合)
申請中の在留期間内申請なら処分まで在留継続(満了日から最長2か月・入管法20条6項)
標準処理期間2週間〜1か月(入管庁公表値)
費用更新6,000円(オンライン5,500円)
申請先地方出入国在留管理官署 or 在留申請オンラインシステム
根拠入管法第21条・在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン(最終改正令和8年6月)

よくある質問

Q.在留期間の更新はどんな基準で審査されますか?
A.入管法上、更新は法務大臣が「適当と認めるに足りる相当の理由」があるときに許可される裁量判断です。入管庁のガイドラインは考慮事項として8項目(在留資格該当性、上陸許可基準への適合、在留資格に応じた活動の実績、素行、独立の生計、雇用・労働条件、納税義務等の履行、入管法上の届出義務の履行)を公表しています。1は必要条件、2は原則適合が求められ、3以下は総合判断の考慮要素です。
Q.住民税や国民健康保険の未納は更新に影響しますか?
A.影響します。ガイドラインは納税義務の不履行を消極的要素と明記し、刑を受けていなくても高額・長期間の未納で悪質なものは同様に扱うとしています。国民健康保険料など法令上の納付義務も対象です。令和8年6月の改正では、入管庁が関係機関から納税状況等の情報提供を受けて許否判断を行う場合があることが注記されました。
Q.転職しただけで更新が不許可になることはありますか?
A.転職自体は不許可理由ではありませんが、2つの落とし穴があります。①契約機関の変更から14日以内の所属機関等に関する届出を怠ると、届出義務の不履行として消極評価されます。②転職先の業務が在留資格に該当しない場合、次回更新で在留資格該当性を欠くと判断されます。転職時に就労資格証明書の交付を受けておけば、新しい業務の該当性を事前に確認できます。
Q.更新申請はいつからできますか?不許可になったらすぐ帰国ですか?
A.6か月以上の在留期間を持つ人は、満了日の概ね3か月前から申請できます(入管庁案内)。期間内に申請すれば、処分が出るまで、または満了日から2か月を経過する日のいずれか早い時まで、従前の在留資格で在留を続けられます(入管法20条6項・21条4項、いわゆる特例期間)。不許可の場合も直ちに退去ではなく、通常は出国準備のための短期の在留資格への変更等が案内され、事情によっては再申請の余地もあります。

編集長の一言

不許可事例を並べて見えるのは、更新審査は「申請時の書類」ではなく「在留期間中の生活そのもの」を見ているという事実です。8項目のうち5つ(③〜⑧)は申請日までの行動の記録で決まっており、申請直前にできることは限られます。更新対策とは、つまり日頃から届出と納付を淡々と積むこと——地味ですが、これが最強の申請書類です。

出典・関連法令(一次情報)