外国人が日本企業で「オフィスワーク・エンジニア職」に就くときの代表的な在留資格が**「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国)**です。要件は突き詰めれば3つ——①学歴または実務経験、②専攻・経歴と業務の関連性、③日本人と同等以上の報酬。シンプルに見えて、不許可事例の大半はこの3点の理解不足から生まれています。本記事は入管庁のガイドライン統合版(平成20年策定・令和8年4月最終改定)と上陸基準省令の原文に基づき、要件・必要書類・審査の落とし穴までを1本にまとめる総合ガイドです。
この記事の結論
- 対象は**「学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的業務」**。エンジニア・通訳・デザイナー・マーケティング等が典型で、反復訓練でできる現場業務(ライン作業・接客・清掃等)は原則不可。
- 要件は大学卒(専攻と業務の関連性は柔軟判断)or 専門士・高度専門士(相当程度の関連性が必要)or 実務経験10年(国際業務系は3年、大卒の通訳・翻訳・語学指導は経験不要)+日本人と同等以上の報酬。
- 令和8年4月の改定で、通訳・翻訳など言語能力を用いる対人業務はCEFR B2相当(JLPT N2以上等)の語学力が明文の前提になりました。
- 必要書類は所属機関のカテゴリー(1〜4)で大きく変わる。上場企業等(カテゴリー1・2)はほぼ申請書+写真のみ、中小・新設企業(3・4)は学歴証明・決算文書等まで必要。
- 在留期間は5年・3年・1年・3月。実務研修期間が含まれる場合は原則「1年」が決定されます。
1. 制度の骨格 — 法令上の3要件
1-1. どんな活動が該当するか(入管法別表第一の二)
【原文】本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動
条文を分解すると、対象業務は2系統です。
| 系統 | 中身 | 典型職種 |
|---|---|---|
| 技術・人文知識 | 自然科学(理学・工学・農学・医学等)or 人文科学(法律学・経済学・経営学等)の技術・知識を要する業務 | エンジニア、システム開発、設計、経理、法務、マーケティング |
| 国際業務 | 外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務 | 通訳・翻訳、語学指導、広報・宣伝、海外取引、服飾デザイン |
前提は「本邦の公私の機関との契約」(雇用のほか委任・委託等を含む。特定機関との継続的なものに限る)です。ガイドラインは、求人の採用基準に「未経験可、すぐに慣れます。」と書かれるような業務は対象外と明言しています——学術的・体系的な知識を使う仕事かどうかが一貫した判断軸です。
1-2. 上陸許可基準(基準省令)— 学歴・経歴要件
技術・人文知識系の業務は、次のいずれかに該当する必要があります。
- 業務に必要な技術・知識に関連する科目を専攻して大学を卒業(同等以上の教育を含む。海外の大学も可)
- 関連科目を専攻して日本の専修学校の専門課程を修了(専門士・高度専門士の称号が要件)
- 10年以上の実務経験(大学・専修学校等で関連科目を専攻した期間を算入可)
国際業務系は、①翻訳・通訳・語学指導・広報・海外取引・デザイン等の業務に従事すること+②関連業務3年以上の実務経験。ただし大学卒業者が翻訳・通訳・語学指導に従事する場合は実務経験不要です。
1-3. 報酬要件 — 「日本人と同等額以上」
【原文】日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
金額の絶対基準はなく、同じ会社で同種業務に従事する日本人との比較で判断されます。実際に「申請人の月額13万5千円に対し、同時採用の新卒日本人が18万円」で不許可になった事例が公表されています。なお通勤手当・住宅手当など実費弁償的な手当は「報酬」に含まれません。
2. 実務上の注意点 — 審査で落ちるポイント
2-1. 専攻と業務の「関連性」は学歴の種類で厳しさが変わる
ガイドラインは関連性の判断について明確な濃淡をつけています。
- 大学卒(国内外問わず):大学は広く知識を授ける教育機関という性格を踏まえ、従来より柔軟に判断。高等専門学校も大学に準じます。
- 専修学校卒:職業教育機関という性格から、原則として相当程度の関連性が必要。ただし文部科学大臣認定の「キャリア形成促進プログラム」認定課程の修了者は柔軟に判断。
- 関連性が認められた業務に3年程度従事した後の転職では、その後の業務との関連性は柔軟に判断されます。
不許可事例には「声優学科卒→ホテルの通訳」「イラストレーション学科卒→衣類販売の通訳」など、専攻と業務が結びつかないケースが並びます。専門学校卒の申請では、成績証明書レベルで履修科目と業務の対応を説明できるかが勝負どころです。
2-2. 現場業務は「実務研修」の枠内でのみ許容される
技人国で接客・ライン作業等に従事できるのは、日本人の大卒社員にも同様に課される採用当初の実務研修の一環である場合だけです(別紙1)。ポイントは3つ。
- 在留資格該当性は**「在留期間中の活動を全体として捉えて」判断**——研修が在留期間の大半を占める計画は不許可(例:契約期間3年のうち2年が研修)
- 採用から1年を超える研修には研修計画の提出が求められ、合理性が審査される
- 研修期間がある場合、在留期間は**原則「1年」**が決定され、更新時に研修修了・本来業務への移行が確認される
「選抜された者だけが将来専門業務に就くキャリアプラン」は研修と認められず不許可になった事例があります。全員が確実に専門業務へ移行する設計でなければ通りません。
2-3. 通訳・翻訳は令和8年4月から「CEFR B2」が明文基準に
対人業務での申請が多い通訳・翻訳について、ガイドライン別紙4(令和8年4月15日新規公表)が語学力の基準を明文化しました。
【原文】主に言語能力を用いる対人業務等に従事する場合は、申請人がCEFR・B2相当の言語能力を有していることを前提とし、当該言語能力を有していない場合は、上記「一定水準以上の業務」に従事するものとは認められません。
日本語でB2相当と評価されるのは:JLPT N2以上/BJTビジネス日本語400点以上/中長期在留者として20年以上在留/日本の大学卒業(高専・専修学校専門課程修了含む。専攻と業務の関連性が必要)/日本の義務教育修了+高校卒業。外国語は母国語・公用語であること、またはCEFR B2以上の試験証明が基準です。カテゴリー3・4の企業への就職では申請時に証明資料の提出が必須になりました。
あわせて従来からの審査ポイントも変わりません——翻訳・通訳の業務量が実際にあるか(メニュー翻訳程度では不可)、留学生アルバイト向け「通訳」のような必要性の乏しい業務でないかが問われます。
2-4. 派遣形態は「派遣先確定」が大前提
派遣社員としての申請は、申請時点で派遣先が確定していなければ許可されません(令和8年7月公表の取扱い)。例外は新規採用直後の研修後でなければ派遣先が決まらない場合のみで、誓約書等の代替書類が必要です。在留期間は派遣契約期間に応じて決定され、令和8年3月9日申請分から提出書類も変更されています。派遣元だけでなく派遣先にも入管が直接確認を行う場合があります。
2-5. 素行・届出義務 — 資格変更・更新で効いてくる
- 留学生からの変更では、資格外活動許可の範囲(週28時間)を恒常的に超えたアルバイトが発覚して不許可になる事例が繰り返し公表されています。
- 在留カード記載事項の届出、所属機関等に関する届出(転職時14日以内)など入管法上の届出義務の履行も審査の考慮要素です。
- 受入れ機関側の欠格事由も新設されました。特定技能・技能実習制度で人権侵害行為等により受入れ停止中の機関は、原則として技人国外国人の新規受入れが認められません。
IT・オンラインでの解決策
在留資格認定証明書交付申請・変更・更新とも、在留申請オンラインシステムで申請すれば地方入管の窓口に並ぶ必要がなく、手数料も窓口より500円安い5,500円(変更・更新の場合。書面は6,000円)です。所属機関がオンライン利用申出の承認を受けていれば、その承認通知メール自体がカテゴリー2該当の証明書類として使えるため、2回目以降の外国人採用が一気に軽くなります。また通訳・翻訳職の採用では、内定段階でJLPT・BJTのスコアを確認し、証明書を申請書類一式に組み込むフローを社内標準にしておくと、B2基準への対応漏れを防げます。
3. 必要書類チェックリスト
所属機関のカテゴリーで大きく変わります。カテゴリー1(上場企業・公共団体等)・カテゴリー2(源泉徴収税額1,000万円以上等)は原則として申請書・写真・カテゴリー立証資料のみ。以下はカテゴリー3・4(それ以外の企業)の認定申請の主な書類です。
- 在留資格認定証明書交付申請書(写真4cm×3cm・申請前6か月以内撮影)
- 所属機関のカテゴリーを証明する文書(法定調書合計表の写し等。なければカテゴリー4扱い)
- 労働条件を明示する文書(雇用契約書・労働条件通知書)
- 学歴・職歴を証明する文書(卒業証明書、関連業務の在職証明書、IT告示資格の合格証等)
- 専門士・高度専門士の称号を証明する文書(専門学校卒の場合)
- 国際業務系は関連業務3年以上の実務経験証明(大卒の通訳・翻訳・語学指導は不要)
- 登記事項証明書・会社案内等の事業内容資料(カテゴリー3・4)
- 直近年度の決算文書の写し(新規事業は事業計画書)(カテゴリー3・4)
- 派遣形態の場合:派遣労働に関する誓約書(派遣元・派遣先)+労働者派遣個別契約書
- 通訳・翻訳等の対人業務(カテゴリー3・4):CEFR B2相当の言語能力を証する資料(JLPT N2以上等)
提出書類チェックシート(認定・変更・更新の各様式)は入管庁の技人国ページからダウンロードできます。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象業務 | 自然科学・人文科学の技術・知識を要する業務/外国文化に基盤を有する業務 |
| 学歴・経歴要件 | 関連専攻の大学卒 or 専門士・高度専門士 or 実務10年(国際業務は3年) |
| 報酬 | 日本人が従事する場合と同等額以上 |
| 在留期間 | 5年・3年・1年・3月(実務研修を含む場合は原則1年) |
| 費用 | 認定申請は手数料なし/変更・更新は6,000円(オンライン5,500円) |
| 標準処理期間 | 1〜2か月(変更許可申請・入管庁公表値) |
| 申請先 | 地方出入国在留管理官署 or 在留申請オンラインシステム |
| 根拠法令 | 入管法別表第一の二・基準省令(平成2年法務省令第16号)・入管庁ガイドライン(令和8年4月最終改定) |
よくある質問
- Q.技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザとはどんな在留資格ですか?
- A.日本の企業等との契約に基づき、理学・工学など自然科学の分野、法律学・経済学など人文科学の分野の技術・知識を要する業務、または外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務(通訳・翻訳、海外取引、デザイン等)に従事するための就労系在留資格です。エンジニア、通訳、マーケティング担当者などが典型例で、在留期間は5年・3年・1年・3月のいずれかです。
- Q.専門学校卒でも技人国ビザは取得できますか?
- A.取得できます。ただし日本の専修学校の専門課程を修了し「専門士」または「高度専門士」の称号が付与された者に限られ、専攻科目と従事する業務の間に大学卒より強い「相当程度の関連性」が求められます。文部科学大臣認定のキャリア形成促進プログラム認定課程の修了者は、関連性が柔軟に判断されます。
- Q.工場のライン作業や店舗の接客に従事することはできますか?
- A.原則できません。反復訓練で従事可能な業務は在留資格に該当しないためです。例外は日本人の大卒社員にも同様に課される採用当初の実務研修の一環である場合で、在留期間全体の大半を占めないことが条件です。採用から1年を超える実務研修には研修計画の提出が求められ、合理性が審査されます。
- Q.通訳・翻訳の仕事で技人国ビザを取るための語学要件はありますか?
- A.あります。令和8年4月公表の新基準(ガイドライン別紙4)により、主に言語能力を用いる対人業務はCEFR B2相当の言語能力が前提となりました。日本語ならJLPT N2以上、BJTビジネス日本語能力テスト400点以上、日本の大学卒業などが該当します。カテゴリー3・4の企業に就職する場合は申請時に証明資料の提出が必要です。
- Q.技人国ビザで転職した場合、どんな手続きが必要ですか?
- A.契約機関との契約終了・新規契約締結から14日以内に、出入国在留管理庁への所属機関等に関する届出が必要です(入管法第19条の16)。また転職先の業務が在留資格に該当するか事前に確認するため、就労資格証明書の交付申請をしておくと、次回の在留期間更新をスムーズに進められます。
編集長の一言
技人国の審査は結局のところ**「その人の学びと、その仕事の中身が、書類の上で一本の線につながるか」**を見ています。不許可事例を読み込むと、落ちているのは能力のない人ではなく、関連性・業務量・報酬の説明を書類で立証しきれなかった申請です。特に令和8年4月のB2基準明文化は「なんとなく通訳」の採用を確実に締め出します——採用側こそ、内定前にこのガイドラインを一読すべきです。
出典・関連法令(一次情報)
- 出入国在留管理庁【統合版】「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(令和8年4月最終改定・PDF)(参照日: 2026-08-19)
- 在留資格「技術・人文知識・国際業務」該当する活動・上陸許可基準(入管法別表第一の二・基準省令抄録・PDF)(参照日: 2026-08-19)
- 出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」(必要書類・カテゴリー区分)(参照日: 2026-08-19)
- 在留資格「技術・人文知識・国際業務」をもって派遣形態で就労する場合の取扱いについて(令和8年7月・PDF)(参照日: 2026-08-19)
- 出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」(手数料・標準処理期間)(参照日: 2026-08-19)