人手不足が深刻な産業分野で、即戦力となる外国人を「労働者」として正面から受け入れる在留資格——それが2019年4月に創設された特定技能です。技能実習(2027年から育成就労)が「育成」を建前にするのに対し、特定技能は試験で技能と日本語を確認したうえで就労させる制度で、1号の在留者は33万人を超え(令和7年6月末)、受入れ見込数は令和11年3月末まで80万5,700人に再設定されました(令和8年1月23日閣議決定)。本記事は入管庁の運用要領(令和8年4月版)と閣議決定の原文に基づき、対象分野・1号と2号の違い・外国人側の要件・受入れ側の義務を1本で俯瞰する制度ガイドです。分野別の試験や業務区分は別冊(分野別運用要領)に委ね、ここでは全分野共通の骨格に絞ります。

この記事の結論

  • 特定産業分野は分野省令上19分野(令和8年4月1日時点)。令和8年1月にリネンサプライ・物流倉庫・資源循環が加わり、2号で受け入れられるのは11分野
  • 1号=相当程度の知識・経験を要する技能。技能試験+日本語試験(技能実習2号良好修了者は免除)、在留は通算5年(一定の場合6年)、家族帯同は原則不可、受入れ機関に支援義務
  • 2号=熟練した技能。更新回数に制限なし、要件を満たせば家族帯同可、支援義務なし。1号を経なくても試験合格で取得可。
  • 1回の在留期間は1号が3年以内で個別指定(令和7年9月30日改正で上限拡大)、2号が3年・2年・1年・6月(「5年」追加の省令案が意見募集中)。
  • 受入れ機関(特定技能所属機関)は日本人と同等以上の報酬・各種法令遵守・定期届出が義務。1号には支援計画の作成・実施(登録支援機関への全部委託可)が必要。

1. 制度の骨格 — 特定技能とは何か

1-1. 法律上の位置づけ

入管法別表第一の二は、特定技能を次の2段階で定義しています。

【原文・1号】法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約……に基づいて行う特定産業分野……であつて法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動

【原文・2号】法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であつて法務大臣が指定するものに属する法務省令で定める熟練した技能を要する業務に従事する活動

ポイントは3つ。①雇用契約(特定技能雇用契約)が前提で、請負・委託は不可。②就労先の機関と分野が指定書で個別に指定され、転職や分野変更には在留資格変更許可が必要(申請中は新しい職場で働けない)。③対象は特定産業分野に限られ、分野は法務省令(分野省令)で定められます。

1-2. 特定産業分野 — 19分野と2号対象11分野

運用要領(令和8年4月版)が掲げる分野省令上の特定産業分野は次のとおりです。

#分野2号受入れ#分野2号受入れ
1介護11鉄道
2ビルクリーニング12物流倉庫 ★
3リネンサプライ ★13農業
4工業製品製造業14漁業
5建設15飲食料品製造業
6造船・舶用工業16外食業
7自動車整備17林業
8航空18木材産業
9宿泊19資源循環 ★
10自動車運送業

★=令和8年1月23日閣議決定で新たに追加された分野。介護に2号がないのは、介護福祉士国家試験に合格すれば在留資格「介護」へ移行する別ルートが用意されているためです。

1-3. 1号と2号の違い — 早見表

項目特定技能1号特定技能2号
技能水準相当程度の知識又は経験を必要とする技能(試験等で確認/技能実習2号修了者は免除)熟練した技能(試験等で確認)
日本語能力試験(N4等)で確認/技能実習2号修了者は原則免除試験での確認なし(漁業・外食業はN3)
1回の在留期間3年を超えない範囲で個々に指定3年・2年・1年・6月
在留の上限通算5年(一定の場合6年)上限なし(更新回数制限なし)
家族の帯同基本的に認めない要件を満たせば可(配偶者・子)
支援受入れ機関または登録支援機関による支援の対象対象外
対象分野19分野11分野

2号は「1号の延長線上の自動昇格」ではありません。運用要領は**「試験の合格等により技能水準を有していると認められる者であれば、1号を経なくても2号を取得できる」**と明記しており、逆に1号を5年務めても試験に受からなければ2号には移れません。

2. 外国人側の要件 — 上陸基準省令の読み方

2-1. 1号の共通要件

上陸基準省令は1号特定技能外国人に次を求めます(技能実習2号の良好修了者で業務に関連性がある場合はハ・ニを免除)。

  1. 18歳以上(認定証明書の申請自体は18歳未満でも可。上陸時点で18歳以上が必要。学歴要件なし)
  2. 健康状態が良好(認定申請は申請前3か月以内、在留中の変更申請は1年以内の医師の診断)
  3. 技能水準(ハ)——分野別運用方針が定める技能試験等で証明
  4. 日本語能力(ニ)——「ある程度の日常会話ができ、生活に支障がない程度」を基本に分野ごとの水準(N4レベルの試験等)
  5. 退去強制令書の円滑な執行に協力する国・地域の旅券(現在イランのみ対象外)
  6. 通算在留期間が5年(一定の場合6年)に達していないこと
  7. 保証金の徴収・違約金契約がないこと(本人だけでなく親族等を含む。本国・日本のブローカーも規制対象)
  8. 分野所管省庁が告示で定める上乗せ基準に適合

2-2. 技能実習2号修了者の免除ルール

「技能実習2号を良好に修了」とは、2年10か月以上修了し、①技能検定3級またはこれに相当する技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格しているか、②合格していなくても実習実施者の評価調書で良好修了と認められることをいいます。免除の範囲には落とし穴があります。

  • 技能試験の免除は、修了した職種・作業と従事する業務に関連性がある場合に限る(対応表はポイント資料の「技能実習2号移行対象職種と特定技能1号分野の関係」)
  • 日本語試験の免除は原則として職種を問わないが、介護日本語評価試験(介護職種以外の修了者)、自動車運送業(タクシー・バス運転者)と鉄道(運輸係員)のN3レベルは免除されない

2-3. 通算5年の数え方

「通算」は分野を問わず1号で在留した期間の合計で、過去の在留分も含みます。失業中の期間・再入国許可による出国期間・変更/更新申請中の特例期間は通算に含まれます。含まれないのは、疎明資料で認められる産前産後・育児休業期間、病気・けが(労災含む)による休業期間、コロナ禍で再入国できなかった期間など。2号評価試験等に不合格となった一定の者は6年まで在留できる特例があります。

なお永住を目指す人材にとって重要なのは、永住ガイドライン改定案が「就労を目的とした在留資格」から技能実習・育成就労・特定技能1号を除外している点です。1号で5年働いても永住の「就労資格で5年」にはカウントされず、永住への時計は2号に移行してから動き始める設計になっています。

2-4. 2号の要件

2号は18歳以上・健康状態良好・熟練した技能の試験等による証明・退去強制協力国の旅券が基本で、通算在留期間の上限はなく、支援計画も不要です(保証金・違約金契約の禁止は2号にも及びます)。分野によっては在留諸申請時に実務経験等が求められます(分野別運用要領を参照)。

3. 受入れ側の義務 — 特定技能所属機関がやること

3-1. 雇用契約と機関の基準

特定技能雇用契約は法第2条の5第1項〜第4項の基準に適合する必要があり、報酬は日本人と同等額以上が必須です。機関自身にも、出入国管理・労働・社会保険・租税関係法令の遵守、非自発的離職者を1年以内に発生させていないこと(特定技能雇用契約後も同様)、役員の欠格事由なし、などの適格性が求められます。

3-2. 1号支援計画

1号特定技能外国人に対しては、職業生活・日常生活・社会生活上の支援計画を作成し実施する義務があります。全部を登録支援機関に委託すれば、支援実施体制の基準に適合しているとみなされます。支援内容と登録支援機関の選び方は監理支援機関と登録支援機関の違いで解説しています。

3-3. 受入れ後の届出

受入れ後は地方出入国在留管理局への定期届出(年1回の「受入れ・活動・支援実施状況に係る届出」)と随時届出が必要です。一定の基準(同一年度内に受入れ実績がある/過去3年に指導勧告・改善命令なし+オンライン申請・電子届出+上場企業等の実績)を満たす機関は、在留諸申請時の適格性書類の提出を省略できます。

IT・オンラインでの解決策

特定技能の在留諸申請は在留申請オンラインシステムで行えます。運用要領は地方入管の窓口混雑を理由にオンライン申請を推奨し、変更・更新の手数料を窓口6,000円に対しオンライン5,500円に設定しています。適格性書類の省略要件にも「オンライン申請・電子届出で行っていること」が含まれるため、複数名を継続的に受け入れる企業は早めに利用者登録を済ませ、定期届出まで電子化しておくのが実務上の定石です。受入れ前には、分野ごとの業務区分と技能実習職種の対応表(ポイント資料p.2〜6)で試験免除の可否を候補者ごとに確認するフローを社内標準にしておくと、後戻りを防げます。

4. 受入れ前チェックリスト(全分野共通)

  • 従事させる業務が分野省令の特定産業分野・分野別運用方針の業務区分に該当するか
  • 分野所管省庁の上乗せ基準(許認可・協議会加入・受入人数上限等)を満たしているか
  • 候補者の技能試験・日本語試験の合格証明、または技能実習2号良好修了の証明(技能検定3級等/評価調書)
  • 技能実習2号修了者の場合、修了職種と従事業務の関連性(対応表で確認)
  • 候補者の通算在留期間(1号で過去に在留した期間を含む)が5年未満か
  • 健康診断個人票(認定申請は3か月以内、変更申請は1年以内)
  • 特定技能雇用契約が日本人と同等以上の報酬など法定基準に適合しているか
  • 保証金・違約金契約がないことの確認(本人・親族・仲介事業者)
  • 1号支援計画の作成(自社実施 or 登録支援機関への委託契約)
  • 在留申請オンラインシステムの利用者登録・電子届出の準備

まとめ

項目内容
制度の目的人手不足分野で即戦力となる外国人の受入れ(平成31年4月開始)
対象分野分野省令上19分野(令和8年4月時点)/2号は11分野
1号相当程度の技能・試験+日本語試験(技能実習2号修了者免除)・通算5年・家族帯同不可・支援対象
2号熟練した技能・更新無制限・家族帯同可・支援対象外・1号経由不要
在留期間1号:3年以内で個別指定/2号:3年・2年・1年・6月
費用認定申請は無料/変更・更新は6,000円(オンライン5,500円)
受入れ機関の義務日本人同等以上の報酬・法令遵守・支援計画(1号)・定期/随時届出
根拠法令入管法別表第一の二・分野省令(平成31年法務省令第6号)・上陸基準省令・運用要領(令和8年4月)

よくある質問

Q.特定技能1号と2号の違いは何ですか?
A.1号は「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」、2号は「熟練した技能」を要する業務に従事する在留資格です。1号は在留が通算5年まで(一定の場合6年)で家族帯同は原則不可、受入れ機関または登録支援機関による支援の対象。2号は在留期間の更新回数に制限がなく、要件を満たせば配偶者・子の帯同が可能で、支援の対象外です。2号は試験合格等で技能水準を証明すれば1号を経なくても取得できます。
Q.特定技能の対象分野はいくつありますか?
A.分野省令に定める特定産業分野は令和8年4月1日時点で19分野です(介護、ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、資源循環)。このうち2号で受け入れられるのは介護・リネンサプライ・自動車運送業・鉄道・物流倉庫・林業・木材産業・資源循環を除く11分野です。リネンサプライ・物流倉庫・資源循環は令和8年1月の閣議決定で追加された新分野で、実際の受入れは分野ごとの試験・告示の整備を待って始まります。
Q.技能実習を修了していれば試験なしで特定技能に移れますか?
A.技能実習2号を良好に修了し、修得した技能と従事する業務に関連性が認められる場合は、技能試験と日本語試験(N4レベル)が免除されます。ただし介護分野の介護日本語評価試験、自動車運送業分野(タクシー・バス運転者)と鉄道分野(運輸係員)に求められるN3レベルの日本語能力は、技能実習2号修了者でも別途証明が必要です。
Q.特定技能1号はどのくらい日本にいられますか?
A.1回の許可で付与される在留期間は3年を超えない範囲で法務大臣が個々に指定する期間(令和7年9月30日の運用要領改正で上限が1年から3年に拡大)で、通算の上限は原則5年です。産前産後・育児休業や病気・けがによる休業期間は疎明資料があれば通算に含めず、特定技能2号評価試験等に不合格となった一定の人は6年まで認められます。失業中の期間や再入国許可による出国期間は通算に含まれる点に注意が必要です。
Q.特定技能の申請に手数料はかかりますか?
A.海外から呼び寄せる在留資格認定証明書交付申請は無料です。在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は窓口申請で6,000円、オンライン申請で5,500円の手数料がかかります(運用要領令和8年4月版)。入管庁は窓口混雑の解消のためオンライン申請を推奨しています。

編集長の一言

特定技能は「分野が決まれば要件も決まる」制度です。本記事の共通ルールはあくまで土台で、実務の勝負は分野別運用要領の業務区分・上乗せ基準・試験の読み込みにあります。令和8年1月の閣議決定で分野は19まで増え、2027年には育成就労からの接続も始まります——「技能実習の次」としてではなく、5年で2号に届く人材を採る設計で向き合う企業から、定着率に差がつくはずです。

出典・関連法令(一次情報)