育成就労制度は3年で終わる制度ではなく、特定技能1号への接続を前提に設計されたキャリアの入口です。「3年後に何が必要か」を最初から知っているかどうかで、本人の学習計画も企業の育成計画も変わります。本記事では入管庁「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)に基づき、育成就労から特定技能1号・2号へ進むルートと要件を整理します。

この記事の結論

  • 移行に必要なのは技能試験(技能検定3級・特定技能1号評価試験等)と日本語試験(A2.2相当以上=JFT-Basic、JLPTのN4等)の合格。
  • 育成終了時の水準=特定技能1号の水準と資料に明記——3年間の育成計画がそのまま試験対策になる設計です。
  • 不合格でも再受験のための最長1年の在留継続が認められます。
  • その先の特定技能2号(11分野)はB1相当以上(N3等)。在留期間に「5年」を追加する省令案も公表済みで、長期就労の環境が整いつつあります。

1. キャリアパスの全体像

育成就労(3年間)           特定技能1号(5年間)        特定技能2号(制限なし)
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入国時: A1相当以上          技能: 技能検定3級・          技能: 特定技能2号評価試験等
(N5等 or 日本語講習)      特定技能1号評価試験等        日本語: B1相当以上(N3等)
        │                  日本語: A2.2相当以上         受入れ: 11分野
        │                  (N4等)
1〜2年経過で本人意向の      ※不合格→最長1年の
転籍が可能に                在留継続(再受験)
  • 受入れ範囲は、育成就労産業分野17分野 → 特定技能1号は特定産業分野19分野 → 特定技能2号は11分野と、段階ごとに異なります。
  • 概要資料の注記にあるとおり、「育成就労終了時及び特定技能1号に求められる技能水準及び日本語能力水準は同等である」——移行試験は「育成の卒業試験」として設計されています。

2. 移行の要件 — 技能と日本語

技能水準

育成終了時に求められるのは育成就労評価試験(専門級)、技能検定3級、または特定技能1号評価試験等への合格です(分野・業務区分ごとに指定。例えば自動車整備では特定技能1号評価試験または3級の自動車整備士技能検定)。

日本語能力 — 「A2.2相当以上」とは

段階求められる水準JLPT目安できることのイメージ(参照枠より)
入国時(就労開始まで)A1相当以上N5等上司・同僚の簡単な指示を受けた単独業務
転籍可能水準A2.1相当以上(分野ごと設定)限定的・定型的なやりとりのある業務
育成終了時=特定技能1号A2.2相当以上N4等不明点を上司等が助けてくれれば顧客対応を含む業務も可
特定技能2号B1相当以上N3等身近な話題の主要点を理解できる

「A1/A2/B1」は文化審議会「日本語教育の参照枠」(CEFR準拠の6段階)のレベルです。試験はJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)またはJLPTが使われます。

3. 不合格だったら — 最長1年の再挑戦

【原文】特定技能1号の試験不合格となった者には再受験のための最長1年の在留継続を認める。

3年の育成期間で合格に届かなくても、直ちに帰国とはなりません。この1年をどう使うかは本人と受入れ企業の設計次第です——不合格の内訳(技能か日本語か)を特定し、集中的に対策する期間として使えます。

4. その先へ — 特定技能2号と長期就労

特定技能1号(通算5年)の先には、在留期間の更新に制限のない特定技能2号があります。要件は特定技能2号評価試験等+日本語B1相当以上(N3等)、受入れ範囲は11分野です。

2号をめぐっては、在留期間に「5年」を追加する施行規則改正の省令案が公表されており(2027年1月上旬公布予定)、長期就労の基盤が整備されつつあります。なお永住許可との関係では、永住ガイドライン改定案が「就労を目的とした在留資格」から育成就労・特定技能1号等を除外する設計になっている点に注意が必要です(改定案段階・未確定)。

5. 海外から直接特定技能1号になるルート

【原文】育成就労を経ずに外国で試験を受験して特定技能1号で入国することも可。

すでに技能・日本語能力のある人材は、外国で技能試験・日本語試験に合格して直接特定技能1号で入国できます。育成就労は「唯一の入口」ではなく、未経験から3年かけて育てるルートとして位置づけると全体像が正確になります。

IT・オンラインでの解決策

JFT-BasicはCBT方式で海外でも受験機会が多く、JLPTは年2回です。移行時期から逆算して受験スケジュールを組むことが、在留継続の1年を使わずに済む最短経路になります。受入れ企業は、育成就労計画の日本語目標と試験日程を同じカレンダーで管理してください。

まとめ

項目内容
移行要件技能検定3級・特定技能1号評価試験等 + 日本語A2.2相当以上(N4等)
設計思想育成終了時の水準=特定技能1号の水準(同等と明記)
不合格時再受験のための最長1年の在留継続
特定技能2号B1相当以上(N3等)・11分野・期間更新制限なし(「5年」追加の省令案公表済み)
直接ルート外国で試験合格→育成就労を経ず特定技能1号入国も可

よくある質問

Q.育成就労を終えたら自動的に特定技能1号になれますか?
A.自動ではありません。技能検定3級・特定技能1号評価試験等の技能試験と、日本語能力A2.2相当以上(JFT-Basic、JLPTのN4等)の試験への合格が必要です。ただし育成終了時に求められる水準と特定技能1号の水準は同等に設定されているため、3年間の育成そのものが移行準備になる構造です。
Q.試験に落ちたら帰国しなければいけませんか?
A.直ちにではありません。特定技能1号の試験に不合格となった人には、再受験のための最長1年の在留継続が認められると概要資料に明記されています。3年の育成+最長1年の再挑戦期間という設計です。
Q.特定技能2号まで進むには何が必要ですか?
A.特定技能2号評価試験等と日本語能力B1相当以上(JLPTのN3等)の試験への合格が必要で、受入れ範囲は特定産業分野のうち11分野です。2号は在留期間の更新に制限がなく、現在は在留期間に「5年」を追加する省令案も公表されています(2027年1月上旬公布予定)。
Q.育成就労を経ずに特定技能1号になる方法はありますか?
A.あります。外国で技能試験・日本語試験を受験して合格すれば、育成就労を経ずに特定技能1号で入国することも可能と概要資料に明記されています。すでに技能と日本語能力がある人材にとっては直接ルートが有効です。

編集長の一言

この制度設計で最も実務的な一文は「育成終了時と特定技能1号の水準は同等」です。つまり移行対策は特別なものではなく、育成就労計画どおりに3年間育てることそのもの。計画倒れを防ぐ日常の運用こそが、本人の在留と企業の人材確保を同時に守ります。

出典・関連法令(一次情報)