永住ガイドライン改定案の公表以来、最も多い問いは「今のうちに申請すべきか、それとも待つべきか」でしょう。答えは一律ではありません——急いでも避けられない基準と、2027年3月31日までなら避けられる基準が、原文上はっきり分かれているからです。さらに在留期間「3年」の人には見落としやすい経過措置があります。改定案の全体像を判断の順序に組み替えて、フローチャートにします。

この記事の結論

  • 今申請しても避けられないもの:収入(世帯年収)・公共の負担。審査中の案件にも適用される遡及構造です。
  • 2027年3月31日までの申請なら適用されないもの:日本語B1相当・年金・制度理解・学齢期の子の就学・特例年数の引き上げ(配偶者5年3年など)。
  • 在留期間「3年」の人:2027年3月31日までの申請なら「最長の在留期間」として扱われます。4月1日以降は3条件を全て満たす初回申請に限る経過措置に変わります。
  • 待つ場合の注意:過去10年で半年以上の出国1回、または通算2年6か月以上の不在は原則マイナス評価と明文化されます。

1. 適用時期の2段構造 — 何がいつから効くか

改定案第6は、適用開始を2つのグループに分けています。

考慮要素適用開始「今」申請すると
収入(世帯年収・第2の4(2))改定日の6か月前以降の申請+改定日時点で審査中の案件適用される
公共の負担とならないこと(第2の5(7))同上適用される
日本語能力B1相当(第2の5(8))2027年4月1日以降の申請適用されない
年金(第2の4(3))同上適用されない
制度・ルール等への理解(第2の5(9))同上適用されない
学齢期の子の就学(第2の5(10))同上適用されない
特例年数の引き上げ(配偶者5年3年など・第3)同上適用されない

報道どおり改定日が2026年10月1日なら、その6か月前は2026年4月1日。すでに申請済みで審査中の案件も含めて、収入・公共の負担の2項目からは逃げられない設計です。「今出せば全部旧基準」という理解は誤りで、正確には「今出せば、収入・公共負担以外は旧基準」です。

2. 急ぐ価値が大きい人・小さい人

上の表から、申請タイミングで結果が変わる度合いは人によって全く違うことが分かります。

状況急ぐ価値理由
配偶者特例で現行年数(婚姻3年+在留1年)は満たすが改定後年数は満たさない非常に大きい3月31日を過ぎると婚姻5年+在留3年まで待つことになる
日本語B1相当の証明が難しい(高度人材免除に該当しない)大きい3月31日までの申請なら日本語は考慮されない
年金加入歴が薄い(国民年金のみ・未加入期間あり)大きい年金の考慮は2027年4月以降の申請から
高度人材(70点・80点・J-Skip)で特例年数を満たしている小さい特例年数は不変、日本語も免除。ただし収入・公共負担は同じく適用
世帯年収が基準に届くか不安急いでも変わらない収入は審査中案件にも適用される遡及構造

3. 在留期間「3年」の人 — 見落としやすい分岐

10年原則ルートでは、「最長の在留期間をもって在留しているか」も考慮要素です(第2の5(6))。多くの就労資格の最長は5年ですが、実際には在留期間「3年」で暮らしている人が大勢います。改定案の注4は、この扱いを時期で分けています。

【原文】令和9年3月31日までに申請があった永住許可申請においては、在留期間「3年」を有する者であっても、(中略)「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱うこととします。

つまり2027年3月31日までは、在留期間3年のままで申請できます。4月1日以降は経過措置に変わります。

【原文】令和9年4月1日以降に申請があった永住許可申請においては、令和9年3月31日の時点において在留期間「3年」を有しており、その永住許可申請が令和9年4月1日以降に行った初回の永住許可申請で、かつ、令和9年4月1日から当該「3年」の在留期限までの間にその永住許可申請に係る処分を受ける場合に限り、(中略)「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱います。

経過措置の条件は3つすべてです。

  1. 2027年3月31日時点で在留期間「3年」を有していること
  2. その申請が2027年4月1日以降の初回の永住許可申請であること
  3. 2027年4月1日からその「3年」の在留期限までの間に処分を受けること

3つ目が実務上の難所です。永住審査には相当の期間がかかるため、在留期限が近い人ほど「期限までに処分」の条件を満たしにくくなります。在留期間3年で10年要件を満たしている(または近い)人にとって、2027年3月31日は特例対象者と同じくらい重い日付になり得ます。

4. 待つ間の行動も基準になる — 出国日数の明文化

改定案は、10年の在留について出国日数の基準も明文化しました。

【原文】申請時点から過去10年以内において、合理的な理由なく、一回の出国で半年以上不在とした期間がある場合又は通算して2年6月以上不在とした場合は原則として消極評価をします。

「待つ」選択をした人が長期の里帰りや海外赴任を挟むと、その不在自体が将来の申請の考慮要素になり得ます。タイミングの判断は申請日だけでなく、待っている期間の過ごし方まで含めて設計する必要があります。

5. 判断フローチャート

START: 年数要件(特例 or 原則10年)を現行基準で満たしているか?
 │
 ├─ 満たしていない
 │    → 急ぐ選択肢はない。到達時期を計算し、
 │      2027年4月以降の申請になるなら日本語・年金の準備を先に開始
 │
 └─ 満たしている
      │
      Q: 改定後基準(配偶者5年3年など)でも満たすか?
      ├─ 満たさない(配偶者・実子等)
      │    → ★ 2027年3月31日までの申請を最優先で検討
      │
      └─ 満たす
           │
           Q: 日本語B1の証明・年金加入歴に不安があるか?
           ├─ ある → 2027年3月31日までの申請が有利
           │
           └─ ない(高度人材で免除など)
                │
                Q: 在留期間は「3年」か?
                ├─ 3年 → 3月31日までなら無条件で最長扱い。
                │        4月以降は経過措置3条件に依存 → 早めが安全
                └─ 最長(5年等) → 時期による差は小さい。
                         ただし収入・公共負担は時期に関係なく適用

どの分岐でも共通する前提が一つあります。収入・公共の負担は、いつ出しても新基準です。 急ぐ判断の前に、世帯年収と世帯の状況をまず確認してください(世帯の数え方)。

IT・オンラインでの解決策

自分がフローチャートのどの分岐にいるかは、永住要件セルフ診断で確認できます(立場・年数・申請時期を選ぶだけ、入力は保存されません)。あわせて、在留カードの在留期限・婚姻日・入国日と「2027年3月31日」をカレンダーアプリに登録し、必要書類の取得期間(納税証明などは取得に日数がかかります)から逆算しておくと、期限直前の駆け込みを避けられます。

まとめ

項目内容
いつ出しても適用収入・公共の負担(審査中案件にも適用される遡及構造)
3月31日までなら回避日本語B1・年金・制度理解・就学・特例年数引き上げ
在留期間3年3月31日までは最長扱い/4月以降は経過措置3条件(初回申請・期限内処分など)
待つ間の注意半年以上の出国1回・通算2年6か月以上の不在は原則消極評価
根拠改定案第2の5(6)・注4・第6

よくある質問

Q.改定前に急いで申請すれば、新しい基準は全部避けられますか?
A.いいえ。収入(世帯年収)と公共の負担の2項目は、改定日(報道では2026年10月1日)の6か月前以降の申請と、改定日時点で審査中の案件にも適用される構造です。一方、日本語B1相当・年金・制度理解・特例年数の引き上げは2027年4月1日以降の申請から適用されるため、2027年3月31日までの申請なら対象外です。
Q.在留期間が「3年」でも永住申請できますか?
A.2027年3月31日までの申請では、在留期間3年でも「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。2027年4月1日以降の申請では、2027年3月31日時点で在留期間3年を有し、それが4月1日以降の初回の永住申請で、かつその3年の在留期限までに処分を受ける場合に限り同様に扱われる経過措置があります(改定案注4)。
Q.待っている間に気をつけることはありますか?
A.改定案は、申請時点から過去10年以内に、合理的な理由なく1回の出国で半年以上不在とした期間がある場合、または通算2年6か月以上不在とした場合は原則として消極評価すると明文化しています。申請を待つ期間の長期出国は、将来の申請に影響し得ます。
Q.年数要件をまだ満たしていない場合はどうすべきですか?
A.年数が足りない場合は待つしかありませんが、2027年4月1日以降の申請になると日本語B1相当・年金などの考慮要素が加わり、配偶者特例は婚姻5年+在留3年に上がります。到達時期を計算したうえで、適用される基準に合わせた準備(日本語能力の証明、ねんきんネットでの見込額確認など)を先に始めるのが実務的です。

編集長の一言

「駆け込み申請」という言葉が独り歩きしていますが、原文を読むと駆け込みで得をする人と、急いでも何も変わらない人がはっきり分かれます。まず自分がどちらかを確かめること——それがこの改定への最初の、そして最も効果的な対策です。

出典・関連法令(一次情報)