2026年8月4日に公表された永住許可ガイドライン改定案には、これまでの永住審査になかった「日本語能力」の項目が新設されました。基準は「日本語教育の参照枠」のB1相当レベル以上。ただし高度人材とその家族など免除されるケースが原文に明記されており、適用は2027年4月1日以降の申請からです。本記事では改定案の全体像のうち日本語能力(第2の5(8))だけを取り出し、原文に沿って整理します。

この記事の結論

  • 2027年(令和9年)4月1日以降の永住許可申請から、「日本語教育の参照枠」B1相当レベル以上の日本語能力が考慮要素になります(改定案第2の5(8))。
  • 高度人材外国人(70点・80点・特別高度人材)とその家族初等・中等教育を累計6年以上受けた人、日本で出生した永住者の子(養育する親がB1相当以上の場合)などは、日本語能力が考慮要素とされません。
  • どの試験・証明方法でB1相当を確認するかは、改定案の段階では決まっていません
  • 収入・公共の負担と異なり遡及適用はなく、現在審査中の案件には適用されません。

1. 原文 — 何がどう書かれているか

改定案第2の5(8)「日本語能力」の全文です。

【原文】永住許可を受け、今後長年にわたり本邦に生活の本拠を置いて、地域社会に円滑に適応し、社会生活を支障なく過ごすためには、一定水準の日本語能力が求められることから、申請時点において、一定水準の日本語能力を有していることを考慮要素とします。 具体的には、「日本語教育の参照枠」(令和3年10月12日文化審議会国語分科会報告)における日本語能力の熟達度のうち、B1相当レベル以上の日本語能力を有しているかを考慮要素とします。

ポイントは2つあります。

  1. **「要件」ではなく「考慮要素」**という書き方です。国益要件(第2の5)の判断材料の一つであり、B1未達で機械的に不許可とする形式要件としては書かれていません。ただし考慮要素である以上、審査に実質的な影響を持つと考えるべきです。
  2. 基準は特定の試験ではなく、文化審議会国語分科会「日本語教育の参照枠」の熟達度で示されています。参照枠はヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)に準拠したA1〜C2の6段階で日本語能力を記述する枠組みで、B1はその中位(自立した言語使用の入り口)に当たります。

2. 免除される人 — 原文に明記された3つのケース

改定案は「必ずしも申請者本人にB1相当レベル以上の日本語能力を求める必要性・相当性があるとはいえない場合には、これを考慮要素としません」とし、次を例示しています。

#免除されるケース原文の条件
1高度人材外国人とその家族改定案第3の6〜8に該当する場合(下表参照)
2日本の学校教育を長く受けた人学校教育法が規定する初等教育又は中等教育を累計6年以上受けた場合
3永住者の子養育する親がB1相当レベル以上の日本語能力を有し、かつ子が本邦で出生した場合に限る

原文は「など」としており、この3つは限定列挙ではなく例示です。

免除の対象になる「高度人材外国人」(第3の6〜8)は次のとおりです。

該当内容
第3の6ポイント計算で70点以上を3年以上継続して有し在留している人
第3の7ポイント計算で80点以上を1年以上継続して有し在留している人
第3の8特別高度人材(J-Skip)として1年以上継続して在留している人

つまり、高度専門職ルートで永住を目指す人には日本語試験の負担が生じない一方、10年居住の原則ルートで申請する人にはB1相当の確認が加わる——ここがこの改定の実務上の分かれ目です。

3. 適用時期 — 遡及はない

改定案第6は適用時期を次のように定めています。

【原文】本ガイドラインの改定は令和9年4月1日以降の申請から適用します。ただし、上記第2の4(2)及び第2の5(7)は、本ガイドラインの改定日から6か月前の日以降の申請であって、かつ、改定日において申請中である案件にも適用します。

項目適用開始
日本語能力(第2の5(8))2027年(令和9年)4月1日以降の申請から
収入(第2の4(2))・公共の負担(第2の5(7))改定日の6か月前以降の申請+改定日時点で審査中の案件にも適用(遡及構造)

遡及適用の対象は収入・公共の負担の2項目だけで、日本語能力は含まれません。現在申請中の人、2027年3月31日までに申請する人には適用されない構造です。

4. まだ決まっていないこと

  • 確認方法:どの試験(またはどの証明書類)でB1相当を確認するかは、改定案に記載がありません。JLPTなど既存試験との対応も公式には示されていないため、現時点で「N◯級で足りる」と断定することはできません。
  • 案自体の確定:意見募集(2026年9月3日必着)を経て内容が変わる可能性があります。報道では2026年10月の改定が見込まれていますが、日本語能力の適用開始は上記のとおり2027年4月です。

IT・オンラインでの解決策

「日本語教育の参照枠」の熟達度記述(Can-do)は文化庁の公表資料で確認できます。自分の現在地を測るなら、CEFR準拠を明示している日本語試験の過去問やオンライン模試でB1帯の問題に触れておくのが近道です。確認方法が公表されたら本記事を更新しますので、ブックマークしてご確認ください。

まとめ

項目内容
基準「日本語教育の参照枠」B1相当レベル以上(考慮要素)
適用開始2027年(令和9年)4月1日以降の申請
遡及適用なし(収入・公共の負担のみ遡及構造)
免除の例高度人材(70点・80点・J-Skip)とその家族/初等・中等教育累計6年以上/日本出生の永住者の子(親がB1以上)
確認方法未公表(今後の発表を確認)
根拠永住許可に関するガイドライン(案)第2の5(8)・第3の6〜8・第6

よくある質問

Q.永住の日本語要件はJLPTの何級に相当しますか?
A.改定案は特定の試験を指定しておらず、「日本語教育の参照枠」(文化審議会国語分科会報告)のB1相当レベル以上という基準のみを示しています。どの試験・証明方法で確認するかは案の段階では公表されておらず、今後の発表を確認する必要があります。
Q.日本語要件はいつから適用されますか?
A.改定案第6により、2027年(令和9年)4月1日以降の申請から適用されます。収入・公共の負担の2項目と異なり遡及適用の対象ではないため、それ以前の申請や現在審査中の案件には適用されません。
Q.日本語能力が免除されるのはどんな人ですか?
A.改定案は、高度人材外国人(70点・80点・特別高度人材)とその家族、学校教育法上の初等・中等教育を累計6年以上受けた人、日本で出生した永住者の子(養育する親がB1相当以上の場合)などを例示し、これらの場合は日本語能力を考慮要素としないとしています。
Q.B1に達していないと永住は不許可になりますか?
A.改定案の位置づけは「考慮要素」であり、単独で許否を決める形式要件としては書かれていません。ただし国益要件の判断材料になるため、2027年4月以降に申請する場合は事前にB1相当の能力を証明できる準備をしておくのが安全です。

編集長の一言

この項目の実務的な意味は「日本語試験が増える」ことではなく、ルートによって負担が非対称になることだと考えます。高度人材ルートは免除、10年原則ルートは確認あり——2027年4月を挟んでどちらのルートで申請するかの設計が、これまで以上に重要になります。

出典・関連法令(一次情報)