日本人や永住者と結婚している人にとって、永住申請の最短ルートは「配偶者特例」です。永住許可ガイドライン改定案は、この特例の年数を**「婚姻3年+在留1年」から「婚姻5年+在留3年」へ**と引き上げます。対象者が多く、変化幅も大きい——改定案の中で最も生活設計に直結する変更です。現行基準で申請できる期限、急ぐ場合に見落としがちな注意点を、改定案の全体像から配偶者特例だけを取り出して整理します。

この記事の結論

  • 配偶者特例は婚姻5年以上+在留3年以上に、実子等は在留1年以上→3年以上に変わります(改定案第3の1)。
  • 適用は2027年(令和9年)4月1日以降の申請から。つまり現行基準(婚姻3年+在留1年)で申請できるのは2027年3月31日までです。
  • ただし急いで申請しても、「公共の負担とならないこと」の新基準は審査中の案件にも適用される構造(遡及)のため、世帯の経済状況の整理は必要です。
  • 2027年4月以降の申請では、配偶者でも日本語能力(B1相当)などの新しい考慮要素の対象になります。

1. 何がどう変わるのか — 原文対照

現行ガイドライン(令和8年2月24日改訂)はこう定めています。

【現行】日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること

改定案第3の1はこうです。

【改定案】日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が5年以上継続し、かつ、引き続き3年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は3年以上本邦に継続して在留していること

対象現行改定案
配偶者:婚姻期間3年以上5年以上
配偶者:継続在留1年以上3年以上
実子等:継続在留1年以上3年以上

「実体を伴った婚姻生活」という表現は変わりません。変わるのは年数だけですが、婚姻期間は約1.7倍、在留期間は3倍です。

なお、配偶者・子の法律上の優遇そのものは維持されます。入管法第22条第2項ただし書きにより、日本人・永住者・特別永住者の配偶者又は子は素行善良要件と独立生計要件への適合が不要であり、この構造は改定案でも変わりません。

2. 期限 — 現行基準で申請できるのは2027年3月31日まで

改定案第6は「本ガイドラインの改定は令和9年4月1日以降の申請から適用します」とし、特例年数の変更は遡及適用の例外(収入・公共の負担の2項目)に含まれていません

申請日適用される特例年数
〜2027年3月31日現行:婚姻3年+在留1年(実子等は在留1年)
2027年4月1日〜改定後:婚姻5年+在留3年(実子等は在留3年)

判定は申請日基準です。たとえば婚姻2年半・在留1年の人は、2027年3月31日までに婚姻3年に到達すれば現行基準で申請できます。逆に1日でも遅れて4月1日以降の申請になると、婚姻5年+在留3年を満たすまで待つことになります。自分がどちら側にいるかを、婚姻日・入国日から逆算しておくことがこの改定への最初の対策です。

3. 急いで申請しても影響を受けるもの — 公共の負担の遡及

「3月31日までに申請すれば改定と無関係」ではありません。改定案第6のただし書きにより、「公共の負担とならないこと」(第2の5(7))は、改定日の6か月前以降の申請で、改定日時点で審査中の案件にも適用されます(改定日は案の段階では空欄ですが、報道では2026年10月1日と見込まれています)。

そして第2の5(7)には、配偶者・子(独立生計要件が免除される人)についての記述が明示されています。

【原文】これらの者は独立生計要件に適合していることは求められませんが、現に公共の負担となっている場合や、そのおそれが現実的である場合にも、一律に永住許可をすることは、国益に合致するとは言い難いことから、申請者の属する世帯が、現に公共の負担となっている場合や、そのおそれが現実的である状況にあり、そのような場合・状況に至ったことに特段の事情が認められない場合には、消極評価をすることがあります。

つまり配偶者特例で急いで申請する場合でも、世帯として生活保護等の公共の負担になっていないか、その現実的なおそれがないかは新しい基準で見られ得ます。同項は「家族単位での在留の安定や、人道的な配慮の観点を重視して総合的に判断」とも記しており、機械的な不許可を定めるものではありませんが、申請前に世帯の状況を整理しておく意味は大きいでしょう。

4. 2027年4月以降に申請する場合に加わるもの

改定後の申請では、特例年数の引き上げに加えて、国益要件の新しい考慮要素の対象になります。

考慮要素配偶者への適用
日本語能力B1相当(第2の5(8))対象。免除の例示(高度人材とその家族など)に配偶者は挙げられていない
制度・ルール等への理解(第2の5(9))対象
学齢期の子の就学(第2の5(10))対象(学齢期の子を養育する場合)
収入(第2の4(2))・年金(第2の4(3))対象外(独立生計要件は法律上免除)

収入・年金の新基準が独立生計要件(第2の4)の項目である一方、日本語能力などは国益要件(第2の5)の項目——どの要件にぶら下がっているかで、配偶者に適用されるかが分かれる構造です。世帯の数え方の考え方は収入要件の世帯ルールも参考にしてください。

IT・オンラインでの解決策

婚姻期間・在留期間の起算日は、戸籍謄本(婚姻日)と在留カード・パスポートの記録で正確に確認できます。マイナポータルや市区町村のオンライン請求で戸籍謄本を取り寄せ、婚姻日+3年(現行)/+5年(改定後)と、2027年3月31日をカレンダーに並べてみると、自分の申請可能時期が一目で分かります。

まとめ

項目内容
変更婚姻3年+在留1年 → 婚姻5年+在留3年(実子等:在留1年→3年)
適用開始2027年(令和9年)4月1日以降の申請(申請日基準・特例年数に遡及なし)
現行基準の期限2027年3月31日申請分まで
急ぐ場合の注意公共の負担(第2の5(7))は審査中案件にも新基準が適用される構造
2027年4月以降日本語B1相当・制度理解・子の就学も考慮対象に
根拠改定案第3の1・第2の2・第2の5(7)・第6/現行ガイドライン2(1)

よくある質問

Q.配偶者の永住特例はいつから「婚姻5年・在留3年」になりますか?
A.改定案第6により、2027年(令和9年)4月1日以降の申請から適用されます。特例年数の変更は遡及適用の対象ではないため、2027年3月31日までに申請すれば現行の「婚姻3年・在留1年」の基準で審査されます。
Q.今すぐ申請すれば改定の影響を受けませんか?
A.特例年数は現行基準のままですが、「公共の負担とならないこと」の考慮要素は改定日(報道では2026年10月1日)の6か月前以降の申請と改定日時点で審査中の案件にも適用される構造です。配偶者特例で申請する場合も、世帯の経済状況に関する評価は新基準の影響を受け得ます。
Q.配偶者は収入や年金の新基準も満たす必要がありますか?
A.日本人・永住者・特別永住者の配偶者と子は、法律上、素行善良要件と独立生計要件への適合が不要です。収入(第2の4(2))と年金(第2の4(3))は独立生計要件の項目のため対象外ですが、国益要件側の「公共の負担とならないこと」では世帯の経済状況が考慮されます。
Q.2027年4月以降に配偶者特例で申請する場合、日本語要件はありますか?
A.日本語能力(B1相当以上)は国益要件の考慮要素として全申請者が対象で、改定案が例示する免除ケース(高度人材とその家族など)に配偶者は挙げられていません。2027年4月1日以降の申請では、配偶者特例でも日本語能力が考慮され得ます。

編集長の一言

この改定で最も大切なのは「焦って申請する」ことではなく、自分の婚姻日・入国日から2027年3月31日までに現行基準を満たせるかを正確に計算することです。満たせるなら書類を整えて申請し、満たせないなら5年3年を前提に生活設計を組み直す——どちらの側でも、判断材料は日付の計算から始まります。

出典・関連法令(一次情報)