永住許可に関するガイドライン改定案は、第1「総論」から第6「適用時期・既存のガイドラインの整理」までの6部構成・本文13ページです。本記事では、全体像をまとめた記事より一段深く、項番ごとに原文を引用しながら「何が書かれているか」を読み解きます。あわせて、同じ2026年8月4日に公表された「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案」と、特定技能2号の在留期間に「5年」を加える省令案が、永住制度とどう関係するかも整理します。

この記事の結論

  • 改定案は、現行の「法律上の要件+10年特例」の短い文書から、考慮要素ごとに解釈・具体例を書き込んだ13ページの文書に変わります。
  • 最も実務に効くのは、第2の4「独立生計要件」(世帯単位・収入・年金)と第2の5「国益要件」の11項目、そして第6「適用時期」です。
  • 同日公表の永住者取消ガイドライン案(許可後の話)と特定技能2号「5年」省令案(最長在留期間の話)は、永住制度を「入口・在留中・出口」の三方向から同時に整えるものと読めます。

1. 改定案の構成 — 現行との違いを目次で見る

出典: 現行「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」/「永住許可に関するガイドライン(案)」目次。
現行ガイドライン改定案
1 法律上の要件 (1)素行 (2)独立生計 (3)国益 ア〜オ第1 総論(1 「永住者」の位置付け/2 目的)
2 原則10年在留に関する特例 (1)〜(8)第2 許可要件に関する考え方(1 法律上の規定/2 法22条2項の要件/3 素行/4 独立生計 (1)〜(3)/5 国益 (1)〜(11))
(注1)〜(注3)第3 原則10年在留に関する特例 1〜9
「我が国への貢献」は別ガイドライン参照第4 我が国に貢献した者に対する特例(本体に統合)
第5 原則10年在留に関する在留資格「特定活動」の取扱い
第6 適用時期・既存のガイドラインの整理

以下、改定案の項番順に読んでいきます。引用はすべて改定案本文からです。

2. 第1 総論 — 「特に慎重な審査」と「予見可能性」

1 「永住者」の位置付け

「永住者」の在留資格は、在留活動及び在留期間の制限のない最も安定した法的地位であって、この在留資格が付与された外国人は、その後の生涯を本邦に生活の本拠を置いて過ごすことが想定されていることから、永住許可の許否の判断をするに当たっては、特に慎重な審査を行う必要があります。

同時に、永住者の在留資格を「我が国の発展に貢献することが期待できる外国人材を呼び込むためのインセンティブ」とも位置付けており、厳格化一辺倒ではなく人材獲得の観点も併記されています。判断は「その裁量権の範囲は極めて広範」とされ、日本語能力・在日経歴・在留中の行状のほか「出入国在留管理を取り巻く国際環境、日本人口の動向、産業界の人材需給の状況」なども総合考慮するとしています。

2 本ガイドラインの目的

本ガイドラインにより、永住許可の審査に当たって考慮すべき事項についての基本的な考え方を示すことは、永住を希望する外国人や、当該外国人と関係する日本人にとって、永住許可の可否の予見可能性を高めるものであり

「予見可能性」が目的に掲げられている点は、パブリックコメントで意見を書くときの拠り所になります(例:具体的な金額水準が示されていない部分は、この目的との整合を理由に明示を求められます)。

3. 第2 許可要件に関する考え方

1・2 法律上の規定と3要件

入管法第22条第2項を引用したうえで、素行善良要件・独立生計要件・国益要件の3つを整理しています。注1では、令和6年改正法で「この法律に規定する義務の遵守、公租公課の支払等」の文言が令和9年4月1日に法律上追加されるが、これは「従前の本ガイドライン上の記載を法律上の要件として明確化したもの」であり「同日以前の審査においても考慮されていた」と説明しています。

配偶者・子(日本人・永住者・特別永住者の)は素行善良要件と独立生計要件が不要、難民認定・補完的保護対象者等は独立生計要件が不要、という現行と同じ整理です。

3 素行が善良であること

現行と同じ「法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること」の定義に、「違法行為や迷惑行為を繰り返し行っていたと認められるような場合には、この要件に適合しないと評価されます」という例示が加わっています。概要資料は「特段変更無し」としています。

4 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること

(1) 考え方

具体的には、現在及び将来において自活可能と認められる必要があり、日本人と同等水準以上の経済条件が求められます。 この要件は、原則として同一生計世帯単位で審査を行います。

「日本人と同等水準以上」「世帯単位」の2語が、この後の収入・年金の考え方を貫く軸です。

(2) 収入

原則として、申請時点で、申請者の属する世帯年収の額が、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準(以下「年収水準」といいます。)の額に継続して達しているかを考慮要素とします。

世帯年収の数え方も細かく書かれています。①住居と家計を共にする人の年収を合算(単身は本人のみ)②成人して扶養から外れた人の収入は父母に算入しない③「家族滞在」など就労を目的としない在留資格の同居家族の収入は合算しない④扶養する親族(外国在住を含む)は同居していなくても世帯人数に加算⑤世帯人数5人以上は年収水準に生活費等の増加分を加算。注2で「就労を目的とした在留資格」から技能実習・育成就労・特定技能1号・企業内転勤・一部の特定活動を除いています。詳しくは年収要件の記事で扱います。

(3) 年金

申請時点の年齢、申請時点までを含む加入対象期間全ての年金の加入状況(略)及び申請時点の年収から推計される将来において受給可能な年金の見込額(以下「受給見込額」といいます。)が、上記第2の4(2)の日本人世帯の平均収入を上回る年収水準で30年間働き、その期間、厚生年金に加入していた場合において将来受給可能な年金の見込額(以下「受給年金水準」といいます。)に達しているかを考慮要素とします。

不足する場合は「補填資産」(金融資産)で補えるとし、その基準は「申請時の年齢に応じたもの」で若年ほど低いとしています。配偶者がいる場合は受給見込額を合算し、配偶者が第3号被保険者だった場合の見込額を受給年金水準に加算して比べます。

5 その者の永住が日本国の利益に合すると認められること(11項目)

(1) 考え方 — 本改定で最も注目される一文です。

国益要件にいう国益に合するものと認められるためには、単に国益に反しないという消極的なものにとどまらず、積極的かつ具体的に当該外国人の永住が日本国に利益をもたらす必要があります。

(2) 法に規定する義務の遵守 — 住居地届出等(法19条の7〜19条の16)、在留カードの携帯・提示義務(法23条)、資格外活動の禁止(法19条・73条・73条の2)など。「申請時点で現に義務違反の状態にある場合のみならず、過去の義務違反が判明した場合についても、原則として消極評価」。

(3) 公租公課の支払 — 「公租」は所得税・住民税・法人税・固定資産税等、「公課」は公的医療保険・公的年金等。過去の滞納処分歴も原則消極評価。世帯単位で審査。

(4) 刑罰法令違反 — 拘禁刑(懲役・禁錮を含む)・罰金刑、少年法の一定の保護処分は原則消極評価。

(5) 上陸拒否事由への非該当・上陸許可基準への適合 — 現行1(3)エと同旨。注3で上陸許可基準・特定活動告示・定住者告示の要件を指すと整理。

(6) 長期間にわたり我が国社会の構成員として居住していること — 原則10年(うち就労資格・居住資格で5年)は現行どおり。新たに明文化されたのが出国です。

申請時点から過去10年以内において、合理的な理由なく、一回の出国で半年以上不在とした期間がある場合又は通算して2年6月以上不在とした場合は原則として消極評価をします。

最長在留期間の要件と、在留期間「3年」の人の経過措置(注4)は現行の注1とほぼ同内容で引き継がれます。

(7) 公共の負担とならないこと — 独立生計要件が不要な類型(配偶者・子・難民等)でも、

申請者の属する世帯が、現に公共の負担となっている場合や、そのおそれが現実的である状況にあり、そのような場合・状況に至ったことに特段の事情が認められない場合には、消極評価をすることがあります。

ただし「家族単位での在留の安定や、人道的な配慮の観点を重視して総合的に判断」とも書かれています。

(8) 日本語能力

「日本語教育の参照枠」(令和3年10月12日文化審議会国語分科会報告)における日本語能力の熟達度のうち、B1相当レベル以上の日本語能力を有しているかを考慮要素とします。

考慮要素としない場合として、高度人材外国人(第3の6〜8)とその家族、「学校教育法が規定する初等教育又は中等教育を累計6年以上受けた場合」、永住者の子(親がB1以上かつ子が本邦出生)を挙げています。「必ずしも申請者本人にB1相当レベル以上の日本語能力を求める必要性・相当性があるとはいえない場合」という一般条項付きです。どの試験がB1相当かは書かれていません。

(9) 我が国の制度・ルール等への理解

出入国在留管理庁長官が指定する方法により、「生活・就労ガイドブック」に記載されている事項を中心に、我が国の制度・ルール等を理解しているかの確認を行い、その理解が一定水準以上に達しているかを考慮要素とします。

「指定する方法」の中身は改定案には書かれていません。

(10) 学齢期の子の就学 — 義務教育期間の子を養育する親は子が小学校・中学校に通学していること、申請者本人が学齢期なら本人の通学が求められます。

(11) その他 — 令和8年1月23日決定の「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」の各施策(特定在留カード等の普及、日本語・制度学習など)への貢献・寄与も考慮要素になりうるとしています。

4. 第3〜第5 特例と「特定活動」の取扱い

第3 原則10年在留に関する特例(1〜9)

1 日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が5年以上継続し、かつ、引き続き3年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は3年以上本邦に継続して在留していること

現行の「3年以上・1年以上/実子等1年以上」からの伸長です。定住者5年、難民認定後5年、特区3年、地域再生計画3年、高度人材70点3年・80点1年、特別高度人材1年、貢献者5年は現行の枠組みを引き継いでいます。注5で在留特別許可・上陸特別許可(上陸拒否事由該当者)を受けた人には特例を適用しないことが明記されています。

第4 我が国に貢献した者に対する特例

現行では別文書だった「我が国への貢献」ガイドラインの内容(国民栄誉賞・勲章、公益活動5年、ノーベル賞等、外交使節、国際機関幹部、プライム上場企業役員5年、全国規模の賞、文化・芸術の権威ある賞、五輪等上位入賞者など)を本体に取り込み、10年特例の適用に加えて国益要件の総合評価でも積極考慮するとしています。

第5 在留資格「特定活動」の取扱い

「10年」に算定されない活動(継続就職活動、就職内定者、卒業後の起業活動、難民認定等手続中、本国情勢不安による在留)と、「就労資格」に該当するもの(告示6号・8号・36号・37号・46号、EPA看護師・介護福祉士)・しないもの(ワーキングホリデー、インターンシップ、高卒後就職者)を例示しています。特定活動で在留してきた人は、自分の指定内容がどちらに当たるかの確認が必要です。

5. 第6 適用時期・既存のガイドラインの整理

本ガイドラインの改定は令和9年4月1日以降の申請から適用します。 ただし、上記第2の4(2)及び第2の5(7)は、本ガイドラインの改定日から6か月前の日以降の申請であって、かつ、改定日において申請中である案件にも適用します。 また、本ガイドラインの改定により、「我が国への貢献」に関するガイドラインは廃止します。

原則は2027年4月1日以降の申請ですが、収入(第2の4(2))と公共の負担(第2の5(7))は、改定日の6か月前以降の申請で改定日時点で審査中の案件にも適用されます。改定日は本文で「令和8年○月○日」と空欄です。概要資料はこの部分を「収入に関する要素は本年10月施行」と要約しています(※改定日が2026年10月頃と想定した場合、その6か月前=2026年4月以降の申請中案件が対象になるという読み方ができますが、編集部の推測です)。

6. 同日公表の関連2案件 — 「入口・在留中・出口」

永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン(案)(案件番号315000141)

令和6年入管法改正で追加された永住者の取消事由(法22条の4第1項8号:入管法上の義務不遵守・故意の公租公課不払/9号:特定の刑罰法令違反による拘禁刑)の解釈指針です。許可要件を定める永住許可ガイドラインが「入口」なら、こちらは「在留中」の文書です。押さえておきたい点は3つです。

  1. 「故意に」の解釈 — 「支払義務があることを認識しているにもかかわらず、あえて支払をしない場合」に限定し、病気・災害・失業などやむを得ない事情、分納・猶予を受けている場合、給与天引きされているのに会社が納めていない場合などは「該当しないと想定される事例」として明記。
  2. 取消しではなく職権変更が原則 — 取消事由に該当しても「引き続き本邦に在留することが適当でないと認める場合」を除き、法22条の6により他の在留資格(「ほとんどの場合は、『定住者』」)への職権変更が想定され、その後要件を満たせば再度永住許可を受けることも可能としています。
  3. 通報は義務ではない — 国・自治体職員の通報(法62条の2)は「義務ではなく」、通報があっても「直ちに…取消事由に該当すると判断するものではなく」、調査・意見聴取を経て判断するとしています。

締切は永住許可ガイドライン改定案と同じ2026年9月3日(木)必着、提出先も同じ在留企画室です(件名は「パブリックコメント(永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案)」)。

特定技能2号の在留期間に「5年」を追加する省令案(案件番号315000139)

入管法施行規則別表第2を改正し、特定技能2号の在留期間を「3年、2年、1年又は6月」から**「5年、3年、2年、1年又は6月」**にする案です。概要は趣旨として、

永住許可の要件(最長の在留期間を有すること)において、他の就労を目的とする在留資格(最長の在留期間は5年)に比して緩やかとならないように均衡を図る必要性

を挙げています。永住許可の考慮要素「最長の在留期間をもって在留していること」は、特定技能2号ではこれまで「3年」で満たせましたが、5年が新設されれば「5年」を持っていることが必要になる、という関係です。こちらは行政手続法に基づく手続で、締切は2026年9月2日(水)必着(e-Gov表示は9月3日0時0分)、公布は令和9年1月上旬・施行は公布日の予定とされています。

7. 実務上の注意点

  • 改定案は「考慮要素」を並べたもので、各要素の充足・不充足が機械的に許否を決めるとは書かれていません。総論・目的の項に「個々の事案における諸般の事情を総合的に考慮」とあります。
  • 数値(年収水準の金額、補填資産額、B1相当の試験)は本文に書かれていません。今後の公表資料または確定版で示される可能性があり、本サイトで追いかけます。
  • パブリックコメントに意見を出す場合、上記の項番(第2の5(8) など)を示すと対象が正確に伝わります。書き方はパブコメの記事を参照してください。

IT・オンラインでの解決策

改定案PDF(13ページ)は案件ページからダウンロードできます。原文はPDFのまま読むより、テキストにコピーして項番で検索できるようにしておくと、自分に関係する条項を見つけやすくなります。年金の受給見込額は「ねんきんネット」で、在留カードの届出義務の履行状況は手元の届出控えで、それぞれオンライン・書面で確認できます。

3件の案件 早見表

案件番号案件名性質締切(必着)所管
315000140永住許可に関するガイドライン改定案任意の意見募集2026年9月3日(木)出入国在留管理庁 在留企画室
315000141永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案任意の意見募集2026年9月3日(木)同上
315000139入管法施行規則の一部を改正する省令案(特定技能2号の在留期間に5年を追加)行政手続法に基づく手続2026年9月2日(水)出入国在留管理庁 参事官室

よくある質問

Q.改定案は現行ガイドラインと比べてどのくらい長くなりますか?
A.現行は「法律上の要件」と「原則10年在留に関する特例」の2部構成の短い文書ですが、改定案は第1総論から第6適用時期までの6部構成・本文13ページで、考慮要素ごとに解釈と具体例が書かれています。
Q.「積極的かつ具体的に日本国に利益をもたらす必要」とはどういう意味ですか?
A.改定案第2の5(1)は、国益要件について「単に国益に反しないという消極的なものにとどまらず、積極的かつ具体的に当該外国人の永住が日本国に利益をもたらす必要があります」としています。現行ガイドラインにはこの表現はありません。
Q.同じ日に公表された「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案」とは何ですか?
A.令和6年入管法改正で追加された永住者の在留資格取消事由(入管法上の義務不遵守、故意の公租公課不払、特定の刑罰法令違反による拘禁刑)の解釈指針を示す案です。永住許可後の在留状況に関するもので、許可要件を定める永住許可ガイドラインとは別の文書です。
Q.特定技能2号の在留期間「5年」の省令案は永住とどう関係しますか?
A.永住許可の考慮要素に「最長の在留期間をもって在留していること」があります。省令案は特定技能2号の在留期間に5年を加えるもので、概要では永住許可要件が他の就労資格(最長5年)に比して緩やかにならないよう均衡を図る必要性が趣旨として挙げられています。

編集長の一言

要約記事だけを読むと「年収・年金・日本語」の3点に見えますが、原文を項番順に追うと、世帯単位の数え方、出国期間、過去の義務違反、制度理解の確認、そして適用時期の但し書きまで、実務に効く記述が随所にあります。同日に「取消し」と「特定技能2号の5年」が並んで公表された構図も、永住制度全体の設計として見ておく価値があります。

出典・関連法令(一次情報)