介護事業所は増えているのか、減っているのか——。厚生労働省が公表する「介護サービス情報公表システム オープンデータ」の12時点分(2020年12月末〜2026年6月末)を当編集部が独自にデータベース化し、主要サービスの5年半の動きを集計しました。結論から言えば、介護は「成長」でも「縮小」でもなく、サービス間で事業所が大きく入れ替わる「再編」の途中にあります。指定申請・更新業務を扱う行政書士にとって、市場がどこで動いているかを示すデータです。

この記事の結論

  • 訪問看護は5年半で+41.5%(13,032→18,435事業所)と突出して増加。一方居宅介護支援(ケアマネ事業所)は−9.4%(39,978→36,212)と最大の減少。
  • 通いの介護も縮小基調:通所介護−5.7%、地域密着型通所介護−4.9%(2つ合計で−2,421事業所)。
  • 総数は横ばいでも中身は激しく動いており、訪問看護は5年間で新規約1.1万・廃止約0.6万、居宅介護支援は廃止1.3万が新規0.9万を上回り続けた
  • 指定は6年ごとの更新制。新規の絶対数が大きい訪問系と、既存ストックの更新管理が実務の入口になる。

1. データと方法

項目内容
出典厚生労働省「介護サービスの情報公表システム オープンデータ」
期間2020年12月末〜2026年6月末の12時点(半年ごと)
規模延べ約267万行(全国の事業所票を当編集部がデータベース化)
集計対象事業所数の推移は主要サービス、新規・廃止は事業所番号の時点間照合で算出
利用条件営利・非営利を問わず二次利用可能(機械判読可・無償)と明示されたオープンデータ

2. 5年半の増減 — 伸びるサービス、消えるサービス

主要サービスの事業所数(2020年12月末→2026年6月末)です。

サービス2020-122026-06増減増減率
訪問看護13,03218,435+5,403+41.5%
訪問リハビリテーション4,5315,067+536+11.8%
介護老人福祉施設(特養)8,1748,525+351+4.3%
訪問介護34,28135,166+885+2.6%
認知症対応型共同生活介護13,92814,236+308+2.2%
福祉用具貸与7,3167,027−289−4.0%
介護老人保健施設4,2964,091−205−4.8%
地域密着型通所介護18,95118,023−928−4.9%
通所介護26,06024,567−1,493−5.7%
居宅介護支援39,97836,212−3,766−9.4%

構図は明確です。医療との連携が強い訪問系(訪問看護・訪問リハ)が伸び、ケアプランを担う居宅介護支援と「通い」のデイサービス系が縮んでいます。

制度要因による変動も付記します。介護療養型医療施設は経過措置終了に伴い759→56(−92.6%)とほぼ消滅し、受け皿の介護医療院は438→938(+114.2%)に倍増しました。

3. 総数の裏で起きている入れ替わり

「横ばい」に見える市場も、内側では大量の新規と廃止が同時に起きています。5年間(2021年6月末〜2026年6月末の時点間照合)の累計です。

サービス新規廃止差引
訪問介護12,93112,046+885
訪問看護11,1325,729+5,403
居宅介護支援9,19712,963−3,766
通所介護5,4656,958−1,493
  • 訪問介護は総数+2.6%の静かな数字の裏で、5年に約1.3万件の新規指定が発生しています。参入も退出も多い、回転の速い市場です。
  • 居宅介護支援は5年間一貫して廃止が新規を上回り続けました。 一時的な落ち込みではなく構造的な縮小です。

4. 実務への示唆 — 指定申請業務はどこにあるか

  1. 新規指定の量がある場所:絶対数では訪問介護・訪問看護の2つが突出しています。開業・法人の多角化支援を入口にするなら、この2サービスの指定基準(人員・設備・運営)を押さえるのが効率的です。
  2. 更新は6年ごとに必ず戻ってくる:介護保険法上の指定有効期間は6年です。2026年時点の事業所ストック約22.3万をベースに、既存客の更新期限管理がそのまま反復受注と顧問化の基盤になります。
  3. 縮小サービスの顧客には撤退・転換の局面支援:通所系や居宅介護支援の縮小は、廃止届・事業譲渡・他サービスへの転換(指定の取り直し)という別種の手続需要を生みます。

IT・オンラインでの解決策

オープンデータはCSVで半年ごとに更新されるため、事業所番号をキーに時点間を突合するだけで、自分の営業エリアの新規・廃止リストを機械的に抽出できます。スプレッドシートでも十分実装可能で、指定更新期限(指定年月日+6年)の一覧化と組み合わせれば、更新案内の声かけリストが自動で作れます。

5. この集計の限界

  • 事業所「数」の集計であり、定員・利用者数の規模は反映していません(大規模化による統合は「減少」に見えます)。
  • 新規・廃止はオープンデータへの掲載・削除ベースであり、指定日・廃止日そのものではありません(反映遅延は年次合算で補正)。
  • 休止・再開、事業所番号の変更を伴う移転は新規・廃止に誤計上される可能性があります。

よくある質問

Q.介護事業所は全体として増えていますか、減っていますか?
A.2026年6月末時点の主要10サービス合計は5年半前とほぼ横ばいですが、内訳が大きく入れ替わっています。訪問看護が+41.5%と突出して増える一方、居宅介護支援は−9.4%、通所介護は−5.7%と減少しており、「増減」より「再編」が実態です。
Q.行政書士にとって介護分野の指定申請市場はどこにありますか?
A.新規指定の絶対数が大きいのは訪問介護(5年間で約1.3万件)と訪問看護(約1.1万件)です。また介護サービスの指定は6年ごとの更新制のため、既存事業所の更新期限管理がそのまま反復受注の基盤になります。
Q.オープンデータの新規指定数をそのまま使ってよいですか?
A.注意が必要です。2024年12月末版では全サービスで新規掲載数が急減しますが、翌時点で反動増があり、システムへの反映遅延とみられます。半期単位の数字は使わず、1年(2時点合算)で比較することを推奨します。

編集長の一言

「介護事業所は増えた/減った」という単純な物語は、このデータの前では成立しません。総数横ばいの裏で毎年数千件の指定と廃止が同時に起きている——つまり手続きの需要は総数の増減ではなく回転から生まれています。数字の動く場所に業務があります。

出典・関連法令(一次情報)