育成就労外国人の受入れは、雇用契約を結べば始められるものではありません。外国人ごとに3年間の「育成就労計画」を作成し、外国人育成就労機構の認定を受ける——ここが制度の入口であり、準備不足が最初に露呈する関門です。本記事では育成就労制度運用要領(第4章 育成就労計画の認定等)に基づき、認定基準の全体像と、申請でつまずきやすいポイントを整理します。施行日前申請の受付開始は2026年9月1日です。
この記事の結論
- 計画には技能・日本語の到達目標を定める必要があり、目標にできる試験は分野別運用方針で定められたものに限られます(技能:3級技能検定・相当する育成就労評価試験・特定技能1号評価試験のいずれか/日本語:原則A2相当)。
- 開始から1年以内の中間評価(一定水準の試験の受験)が義務。3年後だけ見ていると落とし穴になります。
- つまずきやすいのは非自発的離職者の存在・人数枠の数え方・待遇基準の3つ。
- 施行日前申請は2026年9月1日〜機構地方事務所・支所で受付。様式・Q&Aは2026年6月頃公表予定。
1. 認定制の全体像
育成就労計画の認定基準は育成就労法第9条と主務省令(育成就労法施行規則)に定められており、機構が申請書類と添付資料で確認します。大枠は次のとおりです。
| 基準の柱 | 中身 |
|---|---|
| 分野 | 従事させる業務の分野が育成就労産業分野であること |
| 目標・内容 | 技能・日本語の目標、業務内容等が主務省令の基準に適合 |
| 期間 | 育成就労の期間が3年以内 |
| 体制・待遇 | 育成を行わせる体制、報酬その他の待遇が基準に適合 |
| 人数 | 受入れ人数が上限以内 |
2. 目標基準 — 試験の設定を間違えない
計画には「育成就労が終了したときに到達すべき技能及び日本語の能力の水準」を目標として定めます。
【原文・規則第13条】一 育成就労外国人に修得させる技能に係る育成就労の目標 修得させる技能に係る三級の技能検定又はこれに相当する育成就労評価試験に合格すること。
- 技能:①3級の技能検定、②相当する育成就労評価試験(専門級=3級技能検定と同等水準)、③特定技能1号評価試験(同じく3級相当水準)のいずれか。
- 日本語:本邦での生活に必要な日本語能力+業務に必要な日本語能力を試験等で証明。原則として日本語教育の参照枠A2相当水準で、分野によってはより高い水準が設定されます。
中間評価 — 1年以内の受験義務
実施者には、育成就労の終了までに目標の試験を受験させる義務に加えて、開始から1年以内に、目標として設定した技能試験・日本語試験の一定水準の試験(育成就労評価試験の初級=技能検定基礎級と同等水準など)を受験させる義務があります。受験手配の遅れは計画不履行に直結します。
3. 落ちるポイント① — 非自発的離職者
運用要領は、現に雇用している労働者を非自発的に離職させて、その補填として育成就労外国人を受け入れることを制度趣旨に反するものとしています。「非自発的離職者」の判定は次のとおりです。
| 非自発的離職に当たらない | 非自発的離職として扱われる |
|---|---|
| 定年等による離職 | 賃金不払い・過度な時間外労働・採用条件との相違など労働条件の重大な問題による離職 |
| 自己の責めに帰すべき重大な理由による離職 | 故意の排斥・嫌がらせなど就業環境の重大な問題による離職 |
| 有期契約の期間満了(更新申込みが重大な自己責任事由で拒絶された場合) | 希望退職の募集・退職勧奨を理由とする離職 |
| 自発的な離職 |
対象は「受け入れる外国人が従事しようとする業務と同種の業務に従事していた労働者」です。直近の人員整理・退職勧奨の履歴がある場合は、申請前に整理しておくべき最重要ポイントです。
4. 落ちるポイント② — 人数枠の数え方
受入れ人数の上限そのものに加えて、経過措置中の技能実習生の数え方に注意が必要です。
- 施行後も技能実習を続けている1号・2号技能実習生は、育成就労外国人の数として計算されます。
- 3号技能実習生は計算されません(技能実習法側の人数枠規制のみ受けます)。
- 枠外となるのは、①やむを得ない事情により転籍した外国人、②育成就労期間が延長された外国人、③妊娠・出産等で中断後に再開する場合など保護の観点から特別の理由がある外国人。
- 地方特別枠の住所要件は、法人は登記簿上の本店所在地、個人は住民票上の住所で判断されます。
5. 落ちるポイント③ — 待遇・体制の基準
- 差別的取扱いの禁止:育成就労外国人であることを理由とした報酬・教育訓練・福利厚生(社員住宅・診療施設等)の差別は不可。「外国人だからボーナスなし」は明確にアウトの例示です。
- 転籍制限期間を1年超とする場合の待遇向上:分野別運用方針で1年超の転籍制限期間が定められた分野でも、その適用には昇給等の待遇向上(内容は分野別運用方針で規定)が伴います。実施者の判断で制限期間を1年に短縮することも可能で、その場合の待遇向上は義務付けられません。
- 一時帰国の有給配慮:年次有給休暇を使い切った外国人から一時帰国の申出があれば、追加的な有給休暇を取得できるよう配慮する義務。雇用契約書に休暇の定めを置くことが求められます。
- 健康・生活状況の把握:雇入れ時・定期健康診断の実施、定期的な聞き取り、緊急連絡網の整備、定期面談など。
- 入国後講習の施設確保:単独型等は実施者、それ以外の監理型は監理支援機関が確保。双方向・音声映像ありのオンライン実施も可。
6. 送出し関連 — 費用と国の縛り
- 送出機関の取次ぎを受ける監理型は、原則MOC(二国間取決め)作成国からのみ受入れ可。外国政府認定送出機関のリストは機構ホームページで確認できます。
- 外国人が送出機関に支払った費用は費目を問わず一切が規制対象。送出機関の委託・連携先である教育機関への訓練費用や仲介人への費用も含まれます。
- 素行要件:外国人本人に一定の犯罪歴等(母国内外を問わず、拘禁刑相当以上など)がないこと。単独型・送出機関の取次ぎを受けない監理型では、申請時に素行が善良であることを証する書類の提出が必要です。
7. 施行日前申請の実務 — 2026年9月1日受付開始
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 受付開始 | 2026年(令和8年)9月1日 |
| 申請先 | 機構の地方事務所・支所(認定課) |
| 結果 | 2027年4月1日以降、順次郵送 |
| 様式・記載例・Q&A | 2026年6月頃に機構ホームページへ掲載予定 |
| 相談 | 認定申請に関するコールセンターを2026年6月頃設置予定 |
なお転籍者を受け入れる場合は、転籍先となる実施者が新たな育成就労計画の認定申請を行います。本人意向転籍の受入れ側には、優良な育成就労実施者であること・転籍者の割合制限(全体の3分の1以内等)・民間職業紹介事業者を利用したマッチングの禁止・転籍元への初期費用の一部補填など、追加の基準があります(転籍の解説記事参照)。優良認定の基準は「追ってお示し」とされており、本記事執筆時点で未公表です。
IT・オンラインでの解決策
申請様式・Q&Aの公表(2026年6月頃)と受付開始(9月1日)をカレンダーに登録し、公表され次第、提出書類一覧と自社状況の突合を始めるのが実務の最短路です。本サイトも運用要領の改定(今年すでに4月6日・8月5日の2回)を監視対象として追跡しています。
まとめ
| 関門 | 要点 |
|---|---|
| 目標設定 | 分野別運用方針の指定試験から選ぶ(技能3級相当+日本語A2相当が原則) |
| 中間評価 | 開始1年以内の受験義務 |
| 非自発的離職 | 同種業務での退職勧奨・労働問題起因の離職があると受入れ不可 |
| 人数枠 | 経過措置の技能実習1・2号を算入、3号は不算入 |
| 待遇 | 差別禁止・転籍制限1年超なら待遇向上・一時帰国への有給配慮 |
| 申請 | 2026-09-01〜機構地方事務所・支所、結果は施行後郵送 |
よくある質問
- Q.育成就労計画は誰が、いつまでに認定を受けるのですか?
- A.育成就労実施者(受入れ企業)が育成就労外国人ごとに3年間の計画を作成し、外国人育成就労機構の認定を受けます。施行日前申請の受付は2026年9月1日に機構の地方事務所・支所で始まり、結果は2027年4月1日以降に順次郵送される予定です。申請様式・記載例・Q&Aは2026年6月頃に機構ホームページへ掲載予定とされています。
- Q.育成就労の目標にはどんな試験を設定するのですか?
- A.技能は①3級の技能検定、②それに相当する育成就労評価試験(専門級)、③特定技能1号評価試験のいずれか、日本語は原則として日本語教育参照枠A2相当水準の試験合格です。ただし目標にできる試験は分野・業務区分ごとに分野別運用方針で定められたものに限られるため、設定前に必ず該当分野の運用方針を確認する必要があります。
- Q.受け入れられる人数に上限はありますか?
- A.あります。さらに注意すべきは数え方で、施行後も経過措置で技能実習を続けている1号・2号技能実習生は育成就労外国人の数として計算されます(3号技能実習生は計算されません)。やむを得ない事情で転籍してきた外国人や、妊娠・出産等で中断後に再開する外国人などは枠外です。
- Q.日本人従業員を辞めさせて育成就労外国人を入れることはできますか?
- A.できません。同種業務の労働者を非自発的に離職させ、その補填として受け入れることは制度趣旨に反するとされています。定年退職・重大な自己責任事由・本人都合などは非自発的離職に当たりませんが、賃金不払いや過度な残業、ハラスメント、退職勧奨を理由とする離職は非自発的離職として扱われます。
編集長の一言
認定基準を読み込むと、審査されるのは書類ではなく受入れ企業の雇用の質そのものだとわかります。非自発的離職者の基準はその象徴です。申請準備を「書類仕事」と捉えず、自社の雇用管理の棚卸しとして使うことが、結果的に最短の認定への道になります。
出典・関連法令(一次情報)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」第4章 育成就労計画の認定等(令和8年8月5日一部改正・PDF)(参照日: 2026-08-16)
- 育成就労制度運用要領のポイント(PDF)(参照日: 2026-08-16)
- 外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律施行規則(主務省令・PDF)(参照日: 2026-08-16)
- 外国人技能実習機構「育成就労計画認定の施行日前申請のご案内」(PDF)(参照日: 2026-08-16)