2026年6月24日、民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)が公布されました。遺言のデジタル化成年後見の作り替え——どちらも数十年単位の大改正で、遺言業務・後見関連業務の前提が変わります。施行は3段階。何がいつ変わるのかを、法務省の公式情報から整理します。

この記事の結論

  • 3段階施行です:①遺言の押印任意化等(公布から1年以内)→ ②成年後見の見直し=後見・保佐を廃止し補助に一元化(2年6か月以内)→ ③電子データで作成し法務局で保管する**「保管証書遺言」の創設**(3年以内)。
  • 各施行日は政令で定める日で、まだ確定していません(2026年8月時点)。
  • いま遺言を作るなら現行方式(自筆証書・公正証書・自筆証書保管制度)で。「電子遺言を待つ」判断は高齢の遺言者には推奨しにくい設計です。
  • 後見・保佐の利用者・受任者は、一元化後の移行運用が今後の政省令で決まるため継続的な情報確認が必要です。

1. 施行スケジュール — 3つの波

段階内容施行期限
第1弾遺言制度の見直しのうち押印の任意化等の簡易な改正公布から1年以内(〜2027年6月)
第2弾成年後見制度の見直し(後見・保佐を廃止し補助に一元化)公布から2年6か月以内(〜2028年12月)
第3弾保管証書遺言の創設(電子データ等で作成・法務局保管)公布から3年以内(〜2029年6月)

第3弾が最後なのは、法務局側のシステム整備が必要だからです。逆にいえば、電子遺言の実運用開始は最長で2029年半ばまでずれ込み得ます。

2. 遺言はどう変わるか

  • 押印の任意化等(第1弾):現行の遺言方式で求められる押印の要件が緩和されます。方式不備で無効になる遺言を減らす方向の改正です。ただし施行前に作る遺言は現行の方式要件(自筆証書なら全文・日付・氏名の自書+押印、財産目録は毎葉署名押印)を厳格に守る必要があります。
  • 保管証書遺言(第3弾)電子データ等で作成し、法務局において保管する新しい遺言類型です。自書が困難な人でも作成しやすくなり、保管まで一体化することで紛失・改ざんリスクにも対応します。paper の自筆証書遺言保管制度(2020年開始)の電子版といえる位置づけです。

実務目線の注意はひとつ——「電子遺言ができるまで待つ」は多くの場合悪手です。施行まで最長3年あり、遺言は作った後でいつでも作り直せます。現行方式で今作り、制度開始後に必要なら移行するのが定石です。

3. 成年後見はどう変わるか — 3類型から1類型へ

現行の法定後見は本人の判断能力に応じて後見・保佐・補助の3類型ですが、改正法は後見・保佐を廃止し、補助に一元化します。「本人の能力を包括的に制限する」設計から、必要な行為に限って必要な期間だけ支援する設計への転換です。

行政書士実務への影響も小さくありません。任意後見・死後事務委任・財産管理等委任契約といった周辺業務の提案の前提が変わり、既存の後見・保佐利用者がどう移行するかは今後の政省令・家庭裁判所の運用に委ねられています。本サイトでは法務省ページを監視対象にしており、施行政令・移行運用が出た段階で本記事を更新します。

IT・オンラインでの解決策

自筆証書遺言保管制度は現在も、保管申請の**事前チェック(書類の写しをメールでPDF送付)**が全国の遺言書保管所へ拡大中です。電子遺言を待たずとも、「自筆で作成 → 法務局保管 + メール事前チェック」で紛失・方式不備のリスクはかなり抑えられます。予約は法務局手続案内予約サービスからオンラインで取れます。

まとめ

項目内容
公布2026年6月24日(令和8年法律第45号)
第1弾遺言の押印任意化等 — 1年以内
第2弾後見・保佐廃止→補助一元化 — 2年6か月以内
第3弾保管証書遺言(電子遺言)創設 — 3年以内
いまの行動遺言は現行方式で作成(待たない)/後見は移行運用を注視
根拠法務省 改正法解説ページ

よくある質問

Q.電子データで遺言が作れるようになるのですか?
A.改正法は、電子データ等で作成し法務局で保管する「保管証書遺言」を創設します。施行は公布(2026年6月24日)から3年以内の政令で定める日で、システム整備を経て開始されます。それまでは自筆証書遺言・公正証書遺言等の現行方式で作成します。
Q.成年後見制度はどう変わりますか?
A.後見・保佐の類型を廃止し、補助に一元化します。本人の残存能力に応じて必要な範囲だけ支援する設計への転換で、施行は公布から2年6か月以内の政令で定める日です。現在後見・保佐を利用中の場合の移行の取扱いは、今後の政省令・運用情報の確認が必要です。
Q.遺言の押印はいらなくなるのですか?
A.遺言制度の見直しの第1弾として、押印の任意化等の比較的簡易な改正が公布から1年以内(2027年6月まで)に施行される予定です。施行日は政令で定められるため、実際に押印なしの方式が有効になる日を確認してから作成するのが安全です。

編集長の一言

遺言の電子化は「便利になる」話に見えて、実務の核心は方式の過渡期管理です。第1弾〜第3弾のどの時点で作った遺言かによって適用される方式要件が変わる——この3年間は、作成日と施行日の対応表を手元に置いて仕事をする期間になります。

出典・関連法令(一次情報)