2026年4月1日、家族法制の大改正が施行されました。柱は離婚後の共同親権——77年ぶりの親権制度の転換です。そして実務への影響はむしろ、養育費の確保策と財産分与の期間延長にあります。離婚協議書を作る場面で何が変わったのか、法務省の公式情報をもとに整理します。
この記事の結論
- 2026年4月1日以降の離婚では、共同親権か単独親権かを父母の協議で選択できます(合意不成立時は家庭裁判所が判断。DV・虐待のおそれがある場合は単独)。
- 法定養育費が新設:取決めなしで離婚しても法定の最低限を請求可能。養育費債権に先取特権が付き、差押えのハードルが下がりました。
- 財産分与の請求期間が2年→5年に延長。
- 親子交流(面会交流)は、家裁が試行的実施を促せる仕組みなどが整備されました。
- 結論:離婚協議書に書くべき項目が増え、「書き方」で子の生活の安定度が変わる時代になりました。
1. 共同親権 — 「選べる」ようになった
改正の要点は「共同親権の強制」ではなく選択制です。
| 場面 | 親権の決まり方 |
|---|---|
| 協議離婚 | 父母の協議で共同親権 or 単独親権を選択 |
| 協議がまとまらない | 家庭裁判所が子の利益の観点から判断 |
| DV・虐待のおそれ | 単独親権(裁判所は共同親権を選べない) |
共同親権を選んだ場合も、日常の行為や急迫の事情がある場合は単独で親権行使できる設計です。一方、進学・転居・医療など重要事項は共同で決めることになるため、**「何をどちらが決めるか」「連絡方法」「意見が割れたときの手順」**を協議書に落とし込んでおくことが紛争予防の核心になります。
2. 養育費 — 「取り決めた者勝ち」から「払わせる仕組み」へ
改正前の実務では、養育費の取決めなし・不払いが構造問題でした。改正はここに2つの道具を入れました。
- 法定養育費:取決めをしないまま離婚した場合でも、法定の額を離婚時に遡って請求できる最低保障。
- 先取特権:養育費債権に法定の担保権が付与され、公正証書等がなくても財産の差押えに進みやすくなりました。
それでも「法定額はあくまで最低限」です。標準算定方式に基づく取決め+強制執行認諾文言付き公正証書化という従来の王道は、改正後も最も確実な選択肢であり続けます。協議書段階で金額・終期(例:22歳到達後最初の3月まで)・特別費用(進学・医療)の分担を明記しておきましょう。
3. 財産分与と親子交流
- 財産分与の請求期間:2年→5年。離婚を急ぎたい事情で財産の話を後回しにした場合の救済余地が広がりました。分与の考慮要素として婚姻中の協力の内容を踏まえることも明確化されています。
- 親子交流:審理中の試行的実施の仕組みや、祖父母等との交流に関する規律が整備されました。協議書には頻度・方法・受渡し・変更手続を具体的に書くのが実務の基本です。
4. 離婚協議書チェックリスト(2026年4月以降版)
- 親権: 共同か単独か/共同の場合の重要事項の決定方法・連絡手段・不一致時の手順
- 監護: 主たる監護者・居所(転居時の事前通知を含む)
- 養育費: 月額・支払日・終期・特別費用の分担(法定養育費は最低限と理解した)
- 強制執行: 公正証書(執行認諾文言付き)にするか決めた
- 親子交流: 頻度・方法・長期休暇の扱い・変更のルール
- 財産分与: 対象財産の一覧・分与方法(請求期間は離婚から5年と理解した)
- 年金分割: 按分割合の合意(請求期限は原則離婚から2年 — 財産分与と異なる点に注意)
IT・オンラインでの解決策
養育費の目安は裁判所公表の算定表で確認できます。公正証書化は多くの公証役場でウェブ会議による事前打合せに対応しており、離婚協議書の案文をメールで送って調整 → 署名当日のみ出向く流れが標準化しています。送金は口座振込にし、記録を自動で残すことが将来の執行の備えになります。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施行 | 2026年4月1日(2024年5月24日公布) |
| 親権 | 協議で共同/単独を選択(DV等は単独) |
| 養育費 | 法定養育費の新設・先取特権の付与 |
| 財産分与 | 請求期間 2年→5年 |
| 実務 | 協議書の記載項目が増加 — 決め方・変え方まで書く |
| 根拠 | 法務省 家族法制見直しページ・民法 |
よくある質問
- Q.離婚したら必ず共同親権になるのですか?
- A.なりません。2026年4月1日以降は、協議離婚の際に共同親権か単独親権かを父母の協議で選べるようになりました。合意できない場合は家庭裁判所が判断し、DVや虐待のおそれがある場合は単独親権とされます。
- Q.法定養育費とは何ですか?
- A.養育費の取決めをせずに離婚した場合でも、法律で定める最低限の養育費を離婚時に遡って請求できる制度です。また養育費債権には先取特権が付与され、取決めがあれば裁判を経ずに財産の差押えがしやすくなりました。
- Q.財産分与は離婚後いつまで請求できますか?
- A.改正により、財産分与を請求できる期間が離婚から2年以内から5年以内に延長されました。過去に期間切れで諦めた事案と同種のケースでも、施行後の離婚では請求余地が広がっています。
編集長の一言
共同親権の議論は賛否が注目されがちですが、実務家の目で見るとこの改正は**「合意文書の価値が上がった改正」**です。何をどう決めておくかで、離婚後の生活の摩擦は大きく変わります。書面づくりの丁寧さが、そのまま子の利益になる分野です。
出典・関連法令(一次情報)
- 法務省「民法等の一部を改正する法律について(家族法制の見直し)」(参照日: 2026-08-17)
- 民法(明治29年法律第89号)— e-Gov法令検索(参照日: 2026-08-17)