物流の2024年問題を受けた構造改革の本丸、貨物運送2法(令和7年法律第60号・第61号、2025年6月11日公布)が段階施行に入っています。2026年4月施行分で多重下請と白トラへの規制が動き出し、この後に控えるのがトラック許可の更新制——「許可は一度取れば終わり」の時代の終了予告です。運送事業者・荷主・支援する行政書士の視点で整理します。
この記事の結論
- 2026年4月施行分:違法な白トラ(自家用有償運送)規制の強化/下請は2次まで(努力義務)/貨物利用運送事業者への書面交付義務・実運送体制管理簿の作成義務拡大/年間利用量100万トン超の事業者への運送利用管理規程・管理者選任。
- 公布後3年以内(〜2028年6月)に、一般貨物自動車運送事業の許可更新制が施行されます。既存事業者も対象——更新という定期審査が業界に入ります。
- 狙いは一貫して**「実際に運ぶ人にお金と責任が届く構造」**への転換。荷主・元請側にも把握義務・適正化の圧力がかかります。
- 実務の初手は自社の下請階層と契約書面の棚卸しです。
1. 2026年4月に施行されたもの
| 項目 | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 白トラ規制 | 自家用車での違法な有償運送への対処強化 | 「ナンバーの色」の法的意味が再強調 |
| 多重下請の制限 | 下請利用は2次まで(努力義務) | 3次下請以下が常態の取引は見直し対象 |
| 書面交付義務 | 貨物利用運送での契約条件の書面(電磁的方法含む)交付 | 口頭・あいまい発注の排除 |
| 実運送体制管理簿 | 誰が実運送しているかの管理簿作成義務の拡大 | 元請の「丸投げして知らない」が通らない |
| 運送利用管理規程 | 年間利用量100万トン超の事業者に規程作成・管理者選任 | 大口荷主・元請の内部統制義務 |
努力義務の項目も「守らなくてよい」ではありません。行政の働きかけ・荷主勧告制度・公表の枠組みと連動し、取引選別の基準として機能していきます。
2. 本丸は許可更新制 — 3年以内に来る
現行の一般貨物自動車運送事業の許可は更新のない永久許可でした。改正法はここに更新制を導入します(施行は公布後3年以内の政令指定日)。
- 既存の許可事業者も更新申請が必要になります。
- 更新時には法令遵守状況・事業遂行能力が改めて見られる設計となる見込みで、帳簿・点呼記録・社会保険・運行管理体制の平時の整備がそのまま更新審査の準備になります。
- 行政書士実務の観点では、建設業の許可更新・経審と同様の**「更新期限管理+定期受任」モデル**が運送業にも生まれることを意味します。
施行日は政令待ちです。本サイトは国交省の改正ページを監視対象にしており、政令公布の段階でこの記事を更新します。
3. いまやる棚卸しチェックリスト
- 自社の受注・発注の下請階層図を書いた(自社は何次か/3次以下が発生していないか)
- 利用運送・傭車の契約条件を書面(電磁的方法含む)で交付しているか確認した
- 実運送体制管理簿の対象取引と記載体制を整えた
- 点呼記録・運行管理・社会保険など「更新審査で見られる帳票」の平時整備を始めた
- 許可更新制の施行情報(政令)をフォローする担当と情報源を決めた
IT・オンラインでの解決策
実運送体制管理簿・書面交付は、配車システム・受発注システムに項目を足して自動生成するのが現実解です(紙の台帳を増やすと現場が続きません)。また経由届出などの一部手続はe-Govオンライン申請に対応済み。許可関係の期限は、車検・保険と同じ台帳で一元管理しておくと更新制施行時の移行が滑らかです。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公布 | 2025年6月11日(令和7年法律第60号・61号) |
| 2026-04施行 | 白トラ規制・下請2次まで・書面交付・実運送体制管理簿・利用管理規程 |
| 3年以内 | 一般貨物の許可更新制(政令待ち) |
| 実務の初手 | 下請階層と契約書面の棚卸し・帳票の平時整備 |
| 根拠 | 国交省改正ページ・貨物自動車運送事業法 |
よくある質問
- Q.トラック運送の許可が更新制になるのは本当ですか?
- A.本当です。令和7年法律第60号・61号(2025年6月11日公布)により、一般貨物自動車運送事業の許可に更新制が導入されます。施行は公布後3年以内の政令で定める日で、施行されると既存事業者も更新申請が必要になり、「一度取れば一生モノ」だった許可の前提が変わります。
- Q.2026年4月から何が変わりましたか?
- A.①自家用車での有償運送(いわゆる違法白トラ)への規制強化、②下請利用を2次までとする制限(努力義務)、③貨物利用運送事業者への書面交付義務や実運送体制管理簿の作成義務の拡大、④年間利用量が大きい事業者の運送利用管理規程の作成・管理者選任などが施行されています。
- Q.荷主にも関係がありますか?
- A.あります。多重下請の是正や実運送体制の可視化は、荷主・元請に「誰が実際に運んでいるか」を把握させる仕組みです。運賃・契約条件の交渉でも、改正法の趣旨(担い手確保のための取引適正化)が前提になっていきます。
編集長の一言
この2法は「規制強化」ではなく**「見える化の強制」**と読むのが正確です。誰が運び、いくら受け取ったかが記録に残る——それだけで多重下請の経済合理性は崩れていきます。更新制の施行日が決まる前に帳票を整えた会社が、最初の更新を最も安く通過するはずです。
出典・関連法令(一次情報)
- 国土交通省「貨物自動車運送事業法等の改正について」(参照日: 2026-08-17)
- 貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)— e-Gov法令検索(参照日: 2026-08-17)